ビジネスにおいてお金の管理をするうえで、領収書は必要な書類のひとつです。
フリーのエンジニアの場合、ご自身で領収書を作成することになるかと思われます。
その一方で、領収書の書き方や管理に関するルールを正しく把握しているか?と問われた際に、明確に答えられる方が多いとは言えないのも事実です。
この記事では領収書にまつわる次の項目を解説します。
・領収書の役割
・レシートや領収証との違い
・領収証の記載方法
・領収書のルール(収入印紙、印鑑、管理方法)
この記事が役に立つ方
・領収書の記載方法を知りたい方
・レシートと領収書の違いを理解したい方
・領収書の管理方法に関するルールを知りたい方
領収書とは?
領収書は商品やサービスを購入した際の証明書となり得る書類です。
報酬の支払いに対して領収書が用いられるケースも存在します。
領収書を発行し、相手が受け取ることで、取引が明文化されます。
領収書はお金の流れを可視化する際に必要不可欠なツールです。
領収書の役割
企業に勤める方であれば、経費の精算時に経理担当より領収書の提出を求められた経験を持つ方も少なくないでしょう。
確定申告の際にも領収書が存在することで、売上や経費の正確な計上や記載へとつながります。
税務署の担当者より、「この経費はどうなっているの?」と尋ねられた際の根拠としての使用も可能です。
確定申告で領収書を提出する必要はありませんが、一定の保管期間(7年など)が設けられています。
|
領収書の保管期間 |
フリーランス、個人事業主 |
青色申告:確定申告の提出期限翌日より7年 |
法人(株式会社、合同会社など) |
原則:確定申告の提出期限翌日より7年 |
参考資料
国税庁「帳簿書類等の保存期間及び保存方法」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5930.htm
国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_2.htm
レシートとの違い
コンビニやスーパー、家電量販店などでは基本的にレシートが発行されます。
レシートは領収書として認められない時期がありましたが、2022年時点ではレシートは領収書と同様の有効な書類です。
2022年時点のレシートは、次の項目が記載されていることがその理由となっています。
・店名(事業者名)
・店舗所在地
・電話番号
・品名
・発行年月日および時間
・商品やサービスの金額
レシートは確定申告の経費の証明書としても使用可能です。
企業に勤めている方の場合には、企業内ルールで「領収書でないと経費の証明書として認めません」というケースも存在します。
あらかじめ経理担当者などに確認しておいたほうが無難でしょう。
領収証との違い
領収書と領収証は同じ意味であり、同じ役割を果たす書類です。
発行される機関などによって名称が異なることが、混乱を招く要因なのではないか?とされています。
民間企業⇒「領収書」
役所などの公的機関⇒「領収証」
銀行などの金融機関⇒「領収証」
税法上では領収書も領収証も同じ「受取証書」の扱いです。
国税庁の「金銭又は有価証券の受取書、領収書」では、「受取書や領収書の中に領収証やレシートが含まれる」というニュアンスで記されています。
国税庁「金銭又は有価証券の受取書、領収書」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7105.htm
ちなみに市販の文房具やオフィス用品での表記は「領収証」です。
領収書と領収証の違いは「ほとんどない」と捉えても問題ありません。
領収書の記載方法
領収書を作成する際に記載する必要のある項目には、次のようなものがあります。
・書類名
・宛名
・金額
・内訳
・但し書き(○○代として)
・発行年月日(○○年○月○日)
・受取人の名称および所在地
書類名
書類名には受取証書として有効なものとするために、「領収書」や「受取書」と記載します。
先述したように、市販のオフィス用品の場合は「領収証」とフォーマットで記載されていますが、そこは引っかからなくて良い箇所です。
宛名
代金を支払った方の「正式名称」を記載します。
「○○○○様」や「株式会社○○」などです。
(株)や「上様」は税法上無効とされるリスクが生じるため、避けておいたほうが無難でしょう。
金額
金額は消費税込みの金額を記載するのが基本です。
金額の書き方は次のいずれかより選択してください。
¥○○,○○○円※
¥○○,○○○円-
金○○,○○○円也
金額の改ざんを防ぐための記載ルールは次のとおりです。
・領収金額の冒頭に「¥」もしくは「金」を記載する
・金額3桁ごとに「,」(コンマ)を記載する
・金額の末尾に「※」や「-」や「也」のいずれかを記載する
内訳
商品の代金より、税抜金額と消費税額をそれぞれに分けて記します。
例①
内訳
税抜金額:10,000円
消費税額(10%):1,000円
例②
内訳
税抜金額:10,000円
消費税額(8%):800円
但し書き(○○代として)
但し書きには、購入した商品やサービスについて記載します。
但し書きの例は以下のとおりです。
・飲食代として
・書籍代として
・消耗品費として
・文房具代として
・旅費交通費として
・お花代として
・広告宣伝費として
・セミナー参加費用として
・通信費として
できるだけ具体的に記すことが求められます。
「お品代として」は「上様」と同様に避けたい表現です。
但し書きがきちんと記載されていることで、後の経理作業(領収書の仕訳)がスムーズに進むメリットも得られます。
税務調査の際にも、的確な資料として提示することが可能です。
発行年月日(○○年○月○日)
領収書を発行した日付を記します。
西暦と和暦はどちらを使用しても問題ありません。
・2022年1月25日
・2022/1/25
・令和4年1月25日
発行年月日を記載するのは、いつ購入した商品やサービスなのか?を明確にすることが目的です。
受取人の名称および所在地
領収書を発行した受取人の名称や所在地も記載する必要があります。
・名前または屋号(○○商店など)
・店舗などの所在地
・連絡先の電話番号
手書きで記すほか、専用のゴム印を作成して押印するパターンも。
個人事業主やフリーランスの場合は、個人印鑑や屋号印鑑も捺印します。
領収書のその他のルール
領収書には記載方法のほかにも、以下のルールが存在します。
・収入印紙に関して
・印鑑について
・管理方法に関して
・発行者・受領者それぞれのルール
収入印紙に関して
領収書に記載された受取金額が50,000円以上(税抜)の場合、発行者には収入印紙を貼ることが義務付けられています。
収入印紙は印紙税として国庫に納められる税金です。
領収書に貼った収入印紙には、必ず割印を押しましょう。
収入印紙が転売や使い回しなどの再利用を防ぐ目的も兼ねています。
受取金額(税抜) |
印紙税額 |
~49,999円 |
非課税 |
50,000円~1,000,000円 |
200円 |
1,000,001円~2,000,000円 |
400円 |
2,000,001円~3,000,000円 |
600円 |
3,000,001円~5,000,000円 |
1,000円 |
5,000,001円~10,000,000円 |
2,000円 |
10,000,001円~20,000,000円 |
4,000円 |
20,000,001円~30,000,000円 |
6,000円 |
30,000,001円~50,000,000円 |
10,000円 |
50,000,001円~100,000,000円 |
20,000円 |
100,000,001円~200,000,000円 |
40,000円 |
200,000,001円~300,000,000円 |
60,000円 |
300,000,001円~500,000,000円 |
100,000円 |
500,000,001円~1,000,000,000円 |
150,000円 |
1,000,000,001円~ |
200,000円 |
受取金額の記載がないもの |
200円 |
参考資料
国税庁「金銭又は有価証券の受取書、領収書」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7105.htm
国税庁「印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7141.htm
●消費税に注意しよう
収入印紙は消費税抜きの受取金額が、50,000円以上から貼る必要が生じます。
内訳
税抜金額:49,000円
消費税額(10%):4,900円
この場合は「非課税文書」に該当するため、収入印紙を貼らなくとも問題ありません。
総額:53,900円
消費税額:10%
同じ受取金額でも、上記の表記では収入印紙の「貼り忘れ」として扱われてしまいます。
収入印紙を貼り忘れた際には、過怠税として本来の印紙税の3倍の金額が課されるのでご注意ください。
参考資料
国税庁「印紙を貼り付けなかった場合の過怠税」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/06/21.htm
印鑑について
フリーランスや個人事業主の場合には、銀行印などの個人の印鑑を用います。
屋号(○○商店)を持つ事業者は、屋号の入った印鑑(角印)を作成しておくと便利です。
シャチハタネームなどは基本的に使用しないほうが無難でしょう。
印鑑は領収書内の発行者名の右横と、収入印紙に割印の形で捺印します。
- 印鑑の種類
フリーランスや個人事業主の場合、必ずしもすべてを作る必要はありませんが、用途に応じて使い分けたい方は、それぞれの印鑑を作成しておくのも良いかもしれません。
印鑑の種類 |
想定される用途 |
認印 |
・開業届 |
実印 |
・不動産の売買 |
丸印 |
・契約書など |
銀行印 |
・金融機関での口座開設 |
住所印 |
・領収書 |
角印 |
・領収書 |
管理方法に関して
領収書は一定期間保管することが義務付けられています。
フリーランスや個人事業主は白色申告の際には5年。
青色申告の場合には7年です。
|
領収書の保管期間 |
フリーランス、個人事業主 |
青色申告:確定申告の提出期限翌日より7年 |
法人(株式会社、合同会社など) |
原則:確定申告の提出期限翌日より7年 |
参考資料
国税庁「帳簿書類等の保存期間及び保存方法」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5930.htm
国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告」
株式会社などの法人に関しては通常7年の保管期間です。
損失が発生した(赤字)の事業年度に限り、9年もしくは10年の保管が求められます。
- 領収書の保管のコツ
領収書は直射日光が当たらない場所に保管しましょう。
特に感熱紙に印刷された領収書は、文字(内容)が消えてしまうリスクがあります。
印刷面が上にならないよう、折り曲げるなどの工夫をしておきましょう。
領収書をクリアファイルなどに入れてから、項目別に分けておくと確定申告の際に手間が省けます。
発行者・受領者それぞれのルール
領収書の発行や取扱に関しては、次のルールも抑えておきたいところです。
・クレジットカード払いの際の領収書
・領収書を書き損じた際の対処法
・郵送での領収書の受け取りは可能か?
・領収書は再発行できる?
- クレジットカード払いの際の領収書
商品やサービスの代金をクレジットカードで支払った際の領収書には、収入印紙を貼る必要がありません。
領収書の但し書きの項目に、「クレジットカード利用(△△△カード)」や、「クレジット取扱」と明記することが条件となります。
★スマホ決済アプリ
「○○Pay」でおなじみのスマホ決済アプリにて代金の決済を行った際には、収入印紙が不要なケースと必要なケースに分かれます。
スマホ決済アプリ・決済方法 |
収入印紙 |
事前のチャージ方式 |
収入印紙は不要です |
後から支払うタイプ |
収入印紙は不要です |
即時決済タイプ |
50,000円以上(税抜)の場合には収入印紙が必要となります |
参考資料
国税庁「クレジット販売の場合の領収書」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/19/37.htm
- 領収書を書き損じた際の対処法
領収書の書き損じは、特に手書きの場合にありがちです。
基本的には領収書内の数字や内容に関しては、二重線やホワイトマーカー、訂正印などで修正することが認められていません。
領収書を書き損じた際には、新たな領収書を発行します。
書き損じた領収書は「×」の印を加えてから保管してください。
すでに相手に書き損じの領収書を渡してしまった際には、必ず返却してもらい、新たに発行した領収書と交換します。
- 郵送での領収書の受け取りは可能か?
領収書は郵送での受け取りも可能です。
領収書を郵送する際には、送付状と領収書を封入後、封筒の表面に「領収書在中」と記載することをおすすめします。
- 領収書は再発行できる?
領収書の再発行はできるだけ避けたほうが無難です。
二重計上などの不正利用のリスクが生じることがその理由となります。
やむを得ない事情で領収書を再発行する際には、領収書に「再発行」と明記することで、トラブルの回避につなげましょう。
再発行した領収書の日付には、再発行を実施した日付を記載します。
◆まとめ
ここまで、次の内容を紹介してきました。
・領収書の役割
・レシートや領収証との違い
・領収証の記載方法
・領収書のルール(収入印紙、印鑑、管理方法)
領収書はフリーランスや個人事業主にとっても、免れることが難しい書類です。
クライアント宛に領収書を発行するケースも想定されます。
確定申告の際には、経費計上の重要な参考文書となり得るのも領収書です。