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ITエンジニアにも影響大。労働者派遣法の改正について考える

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2017年02月08日

改正労働者派遣法は、2015年9月11日に衆議院本会議で可決成立し同月30日に施行されました。現状派遣社員で働いている人も、これから派遣社員となって働く人も一律に2016年1月より改正法の適用対象となりました。

改正労働者派遣法の詳細は後述しますが、派遣社員が改正法の影響を受けるのは3年後ということもあってか、大きな混乱は起こっていないようです。

かつては「社会的弱者」の象徴のように語られた派遣社員も、国内で100万人をゆうに超える数となり「働き方のひとつの選択肢」として社会に受け入れられるようになりましたが、

1985年に労働者派遣法が制定されるまでは労働者派遣のような間接雇用は法律により(職業安定法)禁止されており、労働者派遣は労働者派遣法によって例外的に認められているに過ぎません。

江戸時代の手配師、口入屋にその原型を見ることができる労働者派遣のような間接的な雇用形態はピンハネが横行し、労働者が搾取されてきた歴史的背景があったのです。

労働者派遣法の施行以前にも、1970年代半ばのオイルショック以降、労働者派遣の形態が急速に増えたとされています。以降も、90年代初頭のバブル崩壊や、

2008年のリーマンショックなどの時期に労働者派遣市場が活況を呈していることからも日本経済が大打撃を受けた時期と無関係ではありません。

不況の影響を受けた企業は、経営の立て直しと生き残りをかけて大なり小なり人員整理、いわゆるリストラの断行を余儀なくされます。

社員は財産であり、雇用は社会貢献であると「人」に対して投資を惜しまなかった企業でさえも、「雇用は最大の経営リスク」であることを痛感するに至ったのです。

その結果、企業は経営に関わる最低限の人員を正社員として確保し、「人手」として必要な労働力を「派遣社員」として補うことが増えてきたのです。

企業からすれば、人件費を抑制でき雇用によって生じる責任を回避できる大きなメリットがある一方、当の派遣社員は企業にとってのメリットが判定に最大のデメリットとなるのです。

現在は、悪質な人材派遣業は淘汰もしくは衰退し、福利厚生が充実し社会保険完備や有給休暇を取得できるなど派遣社員の労働条件は過去に比べ劇的に改善していますが、

先に述べたように正社員との差が埋まっているとは言い難いのが現状です。

このような派遣社員と正社員の格差是正は、近年ことあるごとに政治課題として取り上げられ、時の政府の宿題でありながらなかなか前進しないのが問題とされてきました。

2015年の労働派遣法の改正はこうした政治課題の解決を図るべく制定されたものですが、「却って格差を助長する」と逆効果を訴える政治家や識者も少なくありません。事項では、改正労働者派遣法のポイントについて説明します。

改正労働者派遣法、最大のポイントは「同じ職場で働けるのは最大3年まで」

2015年秋に成立した改正労働者派遣法の大きなポイントは2点。派遣には大別して派遣元の正社員ではない人員を派遣する「一般労働者派遣」と自社の正社員を他社に派遣する「特定労働者派遣」がありますが、

改正労働者派遣法ではこの区分が撤廃されます。今後、特定労働者派遣事業を新規に行うことができなくなり、現行の特定労働者派遣も平成30年9月末をもって終了となります。

また、これまで雇用期間の上限が定められていなかった情報システム開発を含む専門26業務の区分が撤廃され、平成28年よりすべての派遣社員は同一の派遣先での雇用期間は3年間が上限となりました。

改正労働者派遣法の成立の背景には、格差社会の元凶の如く扱われる派遣社員をはじめとする非正規雇用の拡大に歯止めをかけ、正社員登用への門戸を広げようという狙いがあり、法案では「派遣労働者の雇用安定措置」を派遣元に義務付けています。

しかし、派遣社員の側からすれば「現在の派遣先で3年しか働けない」ことになり、派遣先からすれば、最長3年で人員を交代させればいかなる業務でも派遣社員で賄うことも可能となり、かえって派遣社員の正社員登用のチャンスが潰えてしまうのでないかという懸念も持たれています。

企業によってはシステムの保守等のITに関わる技術的な部分を派遣社員のITエンジニアに任せており、技術的な熟練度と異動のない社員よりも社内事情に精通している彼らを貴重な戦力としているケースも多く、

こうしたITエンジニアも3年で交代させなければならないとなると多かれ少なかれ影響が出ることは想像に難くありません。このように影響を受けると思われるITエンジニアは全国で30万人ほどいるとされ、派遣社員も派遣先企業も雇用の見直しに関して真剣に考える時期に来ています。

2016年に運用が始まった時点で派遣社員には少なくとも3年以内には仕事に関して何らかの手を打たなければいけないリミットが刻一刻と迫っており、

派遣元に義務付けられた「派遣労働者の雇用安定措置」も派遣労働者の雇用安定につながるとは期待できないと指摘する識者の声も聞かれることからも、遠くない将来に派遣社員の働き方に大きな変化が訪れることも考えられます。

「自分自身でキャリアを切り拓くチャンス」として考える

派遣社員も働き方の一つの形であり、敢えて派遣社員の道を選択している人もかなりの数にのぼります。しかし、今後3年ごとに環境が変わるのは大きなエネルギーを要します。

ですので、少しでも正社員へのステップアップに関心のある人は「自分自身でキャリアを切り拓くチャンス」として考えて、3年間をその準備期間と考えてはいかがでしょうか。

派遣社員としてある程度の収入を確保できた上での活動ですので、就職活動の間に生活が立ち行かなくなるリスクは回避できます。

しかしながら、派遣社員から正社員に昇格できるケースはさほど多くないのが現状ですので、社員への登用を前提とした紹介予定派遣や、正社員登用に実績のある会社を紹介してもらうなど派遣元に関しては遠慮せずにその意志を明確にしておくことが重要です。

また、IT業界であれば事情に精通し、派遣社員からの転職に成功させたエージェントもありますので、まずは登録することをおススメします。

正社員を目指すと言っても、中には派遣社員よりも給料が安く、しかも劣悪な条件で働かされる企業もありますので、企業の口コミ等、情報収集をきちんと行い「こんなはずではなかった」ということにならないようにしてください。

特にIT業界は、大手SIerを頂点とする建設業のような「多重下請構造」となっており、二次、三次、四次…請けとなる中小IT企業では、正社員として採用されたものの賃金は低く抑えられ、

客先常駐で厳しい環境下におかれることもありますので、「正社員になりたい」という願いの成就が、同時に仕事の充実と豊かな生活に繋げられるように3年という限られた期間を有意義に過ごしてください。

最後に確認して欲しいポイント

改正労働者派遣法は、「正社員登用の門戸を広げる」とする賛成派と「格差を助長する」とする反対派が激しい攻防を繰り広げた末に成立したもので、その結果がどうなるかは現在のところ「神のみぞ知る」ところです。

しかし、派遣社員の人にとっては、現在の働き方を見直す機会となり、人によっては人生の転機となるかも知れない重要な3年間となることは間違いありません。

この機会をキャリアアップにつなげるのか、世の中を恨みつつ3年ごとに職場を変えなければならない運命を受け容れるのかは、あなた次第なのです。

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