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数年後には言語/開発自体が不要になる?

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2023年06月19日

近年、AIやノーコード開発の技術が急激な発展を遂げています。そして、これらの技術によってコード生成が容易になったため、エンジニア不要説がささやかれるようになりました。しかし、エンジニアは本当に不要になるのでしょうか。

ここではAIやノーコードによって言語/開発自体が不要になるのかにくわえ、これから活躍するために必要となるスキルをご紹介します。現在エンジニアとして活動している方、これからエンジニア業務を始めようとお考えの方は、ぜひご確認ください。

・ノーコード開発によってWebアプリ・サービスの開発は可能か

・AI利用によってWebアプリ・サービスの開発は可能か

・AIを扱ったWebアプリ・サービスを作れるエンジニアは需要があるのか

・AIを用いたWebアプリ・サービス開発の事例

・これからのエンジニアに求められること

なぜ数年後には言語/開発自体が不要になると言われている?

近年、言語/開発自体が不要になり、エンジニアという職種はなくなると言われることがあります。では、なぜ最近になって不要と言われるようになったのでしょうか。ここで原因をしっかりと確認しておきましょう。

原因①ノーコード開発の発展・普及

ノーコード開発とはソースコードの記述をしなくともWebアプリ・サービスの開発をおこなえるサービスのことです。ソースコードの記述がないことから開発が短期間になり、コスト削減などにつながります。

ノーコードだけでなくローコードも発展・普及が進んでいるサービスです。ローコードはなるべくソースコードを書かないサービスであり、ノーコードとは異なり最低限のソースコードは記述します。

具体的な使用方法としては、画面操作でアルゴリズムを組んでいくものが多いです。1つ1つのブロックに必要なソースコードが組まれており、それをパズルのように組み合わせるイメージとご認識ください。

ノーコードを用いるとプログラムに対する深い知識がなくとも開発がおこなえます。ここからソースコードに精通しているエンジニアは不要になるではないかと言われているのです。

具体的な数値として、2024年までに世界のアプリの65%がノーコード/ローコード開発になるとの予想がなされています。市場規模としても2019年には415億円であったのに対し、2020年では516億円となっており、今後も伸び続けると予想されるでしょう。

原因②AIの発展・普及

AI(Artificial Intelligence)はコンピューターで知能を再現しようとするシステムを指す総称です。一般社団法人 人工知能学会設立趣意書では「大量の知識データに対して、高度な推論を的確に行うことを目指したもの」とされています。

AIのアルゴリズムの1つである機械学習は、与えられたデータの特徴を法則化し、法則化できた状態を自動化します。そして、機械学習はデータが与えられる度に改善をおこなうため、データが大量に与えられるほど性能が向上するのです。現在では大量のデータを与えることによる性能の向上が自動化され、AIの能力は日々向上し続けています。

そして、AIはコード生成も自動化することを果たしています。人間はAIサービスにコード化したい仕組みを送信するだけでコードが得られるようになったのです。コード生成にかかる時間も人間より短くなってきており、経験豊富な開発者が30分かかるものを40秒で生成した実績もあります。

このようにソースコードの記述が自動的になされるようになってきていることからエンジニアは不要と言われるようになりました。

ノーコード開発によってWebアプリ・サービスの開発は可能か

ノーコードはソースコードの記述をせずにシステムを作成していくものでしたが、実際に使えるようなWebアプリ・サービスの開発は可能なのでしょうか。ノーコードで出来る事の限界を確認してみましょう。

簡単なWebアプリ・サービスであれば可能だが複雑なものは難しい

ノーコード開発はツール側で定められたテンプレートに沿って開発を進めるため、どうしてもUI/UX設計の自由度に限界があります。複雑なWebアプリ・サービスを開発する場合はやはり独自のコードを作成しなければなりません。

また、仕様が決められていることから大量のデータを受け付ける基盤や技術要件に対応するための機能がそもそも備えられていないこともあります。複雑なWebアプリ・サービスはデータのやり取りが大きくなりやすいため、こちらの点でもノーコード開発には限界があると言えるでしょう。

つまり、簡単なWebアプリ・サービスであればノーコード開発が適していますが、ツールの能力を超えた時点でソースコードの記述は必須となります。現在では、すべてのWebアプリ・サービスがノーコード開発でおこなえる段階には達していません。

実現するために必要なこと

まず、複雑なWebアプリ・サービスもノーコード開発でおこなうためには、現在コーディングが必要とされている部分のテンプレート化が1つの手です。しかし、多種多様な要件すべてのテンプレート作成をすることは難しく、実現するとしてもかなり先の話になるでしょう。

また、ツールの能力に依存することが主問題となっているため、ツールに拡張性を持たせることも1つの解決策です。しかし、シンプルな操作感などはノーコード開発のメリットでもあるため、拡張性の向上については一長一短なものです。

いずれにせよノーコード開発のみで複雑なWebアプリ・サービスを開発することは現時点では難しく、コーディングの追加(ローコード開発)が必要になることが多いです。

AI利用によってWebアプリ・サービスの開発は可能か

AIの発展は日々進んでおり、プロンプトを与えるだけでコード生成がおこなえるようになりました。では、実際に利用できるようなWebアプリ・サービスはAIのみで開発することはできるのでしょうか。

実現可能であるが、セキュリティ面や正確性に不安が残る

AIは適切なプロンプトを与えることができれば簡易的なWebアプリ・サービスを作成できます。しかし、現時点でのAIは脆弱なコードの生成や誤った認識によるコード生成をおこなう可能性が少なくありません。

脆弱なコードの生成はAIが古い記述法と新しい記述法の判断が付かないことから来ています。つまり、現在ではセキュリティ上推奨されていないものが組み込まれている可能性があるのです。

Webアプリ・サービスは利用者の情報データがやり取りされるため、セキュリティ面は注意深く確認することが必要です。そのため、AIによるWebアプリ・サービス開発は実用上では不安が残ります。

さらに、システム全体の設計は不可能である点、運用・保守がおこなえない点からも開発においてすべてをAIに託すことは難しいです。

実現するために必要なこと

開発においてAIを用いる際には適切な指示を与えなければなりません。また、処理部分が広範囲であると誤ったコード生成がなされる可能性が高くなります。そのため、AIを用いる際には適切な結果が得られるようプロンプトに対する知見を蓄える必要です。

さらに、生成したコードが必ず正しいとは限りません。そのため、AIによってコード生成した場合もソースコードや出力結果の確認をすることが必須です。AIを信頼しすぎず、最終的な責任はあくまでも人間であるといった意識を持っておくことが重要です。

AIを扱ったWebアプリ・サービスを作れるエンジニアは需要があるのか

現時点ではAIで完璧なWebアプリ・サービスを開発することは難しいです。では、AIを扱ったWebアプリ・サービスを作れるエンジニアには需要がないのでしょうか。ここで市場規模からAIを用いるエンジニアの需要を確認してみましょう。

プログラムの市場規模

プログラム全体の市場規模はどのようになっているのでしょうか。株式会社グローバルインフォメーションの市場調査レポートによると、プログラミング言語の世界市場は2021年に約1,547億ドル(約2兆円:2023年時点での換算)とされており、2029年までには10.5%を超える成長率と予想されています。

日本においては、GMOメディアと船井総合研究所の共同調査より予測されたプログラミング教育市場は302億円です(2022年)。そして、2030年には1,000億円を超えるとされています。

このようにプログラム全体の市場は現時点でも小さいものではありません。さらに、海外と日本のどちらにおいても伸び続けるとされていることから、エンジニア自体の需要は高まり続けると予想できます。

AIの市場規模

総務省の調査によると、2021年における世界のAIに関するソフトウェアの市場規模は3,827億円でした。1年後の2022年には5,957億円と前年比55.7%も成長すると見込まれています。

日本においては、2020年におけるAI主要8市場(時系列データ分析、検索・探索、翻訳、テキスト・マイニング/ナレッジ活用、音声合成、音声認識、画像認識)で513億円3,000万円でした。そして、5年後の2025年には1,200億円に達すると予測されています。

ここからAIに対する需要は伸び続けると予測されますが、それに伴ってAIを開発するエンジニアやAIを用いることができるエンジニアの需要も高まり続けるのではないでしょうか。

Webアプリ・サービスの市場規模

AIを扱ったエンジニアの需要が高まることは予想できましたが、そもそもWebアプリ・サービスの需要はどうなっていくのでしょうか。Webアプリ・サービスはクラウドと連携していることが多いため、ここではパブリッククラウドサービスの市場規模を確認してみましょう。

総務省の調査によると、2020年における世界のパブリッククラウドサービスの市場規模は3,281億ドル(前年比+27.9%)でした。そして、2024年には6,589億ドルに達すると予測されています。このようにWebアプリ・サービスの市場規模の拡大は続くと予想され、AIを用いてWebアプリ・サービスを作ることができるエンジニアはこれからさらに重宝されるでしょう。

AIを用いたWebアプリ・サービス開発の事例

現在ではAIが用いられているWebアプリ・サービスが多数あります。ただし、前述のとおりAIを用いてアプリ・サービスを作ることは難しいです。ここでご紹介するものはアプリ・サービスのシステムにAIが組み込まれているものであり、AIを用いて開発されたものではないことにご注意ください。

事例①#AGENT_TRAVIS

#AGENT_TRAVISはPROJECT_TRAVISが提供している映画レコメンドサービスです。本サービスではユーザーのTwitterのつぶやきを基におすすめの映画を選定してくれます。このようなシステムはレコメンダシステムと呼ばれ、日々の生活で利用されやすいシステムです。

事例②Amper Music

Amper MusicはAmperが開発したAIによる自動作曲サービスです。Amper Musicは自分の気持ち、ジャンル、時間を指定すると人工知能が作曲をおこなってくれます。作曲時間は5分程度です。

Amper Musicは4.2億円の追加資金調達やアメリカのシンガーソングライターであるTaryn Southernが利用するなど注目が集まっているサービスです。このようにAIは人間が持っている感性の部分にも関与することができるようになりました。

事例③Tegaki.ai

Tegaki.aiは株式会社Cogent Labsが提供している紙書類のデータ化サービスです。人間が書く文字は同一のものではなく、書き手によって癖が出てしまいます。また、同一人物であっても記入するときの状況や気分で文字は変わってしまうものです。

そのようなことから文字の自動データ化は難しいと言われていましたが、Tegaki.aiでは最先端のAIを導入することで認識率99.2%を達成しています。

これからのエンジニアに求められること

AI技術が急激に発達している現在、エンジニアに求められることも変わってきています。最後に、AI時代のエンジニアに求められることを確認し、今後身に着けていくべきスキルはどのようなものなのかを確認していきましょう。

AIに対する知見

前述のとおり、AIを用いた開発は今後も増え続けると予想されます。そして、AIを適切に扱うためにはAIに対する知見を蓄えておかなければなりません。現在、AIについて概要や仕組みを学んでいないのであれば積極的に学んでいきましょう。

また、万能に見えるAIもプログラム(ソースコード)によって作られています。そのため、AI自体を作成することができるエンジニアの価値は非常に高くなるでしょう。

概念化・システム要件能力

AIは概念化・システム要件が苦手です。そのため、私たちはAIに細かく具体的な指示を出さなければなりません。また、どのようなサービスが欲しいのかはあくまでも人間の考えであり、AIは自分自身で考えることのできない部分です。

そして、AIが苦手なことは人間がおこなうしかなく、それがおこなえるエンジニアの価値は高まっていくでしょう。エンジニアとして活動していく際、単に作業をおこなうのではなく概念化やシステム要件の部分に注目することがおすすめです。

コミュニケーション能力

コミュニケーション能力もAIが代替しにくい能力の1つです。そして、大規模なアプリ・サービスの開発は各開発部隊での調整が必要になるため、コミュニケーション能力はエンジニアにとって必須であると言えます。また、トラブル時の対応などプロジェクト推進力もこれからのエンジニアにはより求められるようになるでしょう。

まとめ

ノーコード開発やAIの発展は著しいものですが、プログラミング言語に対する素養が完全に不要になるのはまだまだ先です。しかし、AIを用いることが多くなってきていることからAIを扱う知識とプログラミング経験の両立が現在のエンジニアには求められています。

さらに、AIに対する知識は数年で変化するため、学び続ける姿勢が何よりも重要です。現在の開発スキルは決して無駄にならないため、プログラミングスキルとAIに代替されないスキルの両方を伸ばしていきましょう。

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