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元請けとは?元受けと下請けとの違いや元請けのメリット・デメリットを解説

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2023年03月15日

IT業界で仕事をしていると「元請け」「下請け」という言葉を耳にすることがあります。何となく分かっているような気がしますが、この両者は全く違うものであり、それぞれの立場も役割も責任も違うものです。
IT業界では、この両者が一緒になってプロジェクトを進めていきますが、自分がどちらの立場なのか、をはっきりと認識していないと思わぬトラブルを招く事もあります。そんな事態が起こらぬよう、しっかりと両者の違いを覚えておきましょう。

元請けとは

下請けとは

元請けと下請けの違い

元請けのメリット・デメリット

下請けのメリット・デメリット

元請け・下請けの種類

下請け先を選定する際に押さえておきたいこと

元請けとは

元請けとは仕事の依頼主と請負契約を結ぶ業者のことで正式には「元請業者」「元請負人」と言います。IT業界であれば「システムを作って欲しい」顧客と直接、開発請負業務契約を結ぶ業者のことです。従って元請けは顧客に対して全面的な開発責任を負います。
顧客の要望を把握し、開発範囲、搭載機能などの基本要件の詰めを行いシステム開発の全体計画を作成するのも元請けの仕事です。また開発の進捗状況の報告や、開発中に顧客に対し確認点などが発生した場合、それを確認するのも元請けの仕事です。
発注した顧客側から見た場合、元請け業者だけが発注先であり契約した相手なので、顧客との折衝は全て元受け業者が対応しなければならないのです。

下請けとは

それに対し、下請けとは元受けが顧客から請け負った仕事の一部を請け負う業者のことで正式には「下請業者」「下請負人」と言います。この場合、下請けが開発請負業務契約を結ぶ相手は元請けとなります。ですので、下請けは直接的に依頼主である顧客と何等かのやりとりをすることはしません。なぜなら顧客が開発を頼んだのは元請けであり下請けではないからです。
従って下請けが折衝する相手は元請け業者ということになります。下請けは元請け業者の指示に従い作業をすることが主たる業務となるのです。

元請けと下請けの違い

つまり、元受けと下請けの違いは「誰から仕事を請け負っているか」という点なのです。顧客から仕事を請け負っている場合は「元請け」、元請けから仕事を請け負っている場合は「下請け」ということになります。
例えば、あなたが家電量販店でエアコンを買ったとします。そして家に配達してもらい工事をして取り付けてもらう、という場合、実際に工事をして取り付けに来るのは家電量販店から依頼を受けた専門業者です。この場合、「元受け」は家電量販店であり、家電量販店の依頼を受けて工事をしにきた専門業者は「下請け」ということになる訳です。

元請けのメリット・デメリット

元受けと下請けは明確に上下関係でもありますが、それぞれにメリット、デメリットがありますのでご紹介致しましょう。まずは元請け側です。

メリット1 依頼主から直接、注文を受けられる

IT業界に限らず元請け、下請けのどちらが利益を上げやすいか、と言えば、それは元請けです。下請けはどうしても元請けの利益確保分だけ工賃は下がってしまうので利益を上げにくいのです。ならば元請けをやれば良い、と考えますが依頼主から見れば実績のある有名な会社の方が信頼性は高い、と考えますので簡単には元請けにはなれないのです。

メリット2 請負金額をこちらから提示できる

元請けは依頼主に対し請負金額を見積もりという形で提示できます。仕事として行う以上、利益を出さなければなりませんがIT業界の仕事は「仕様変更」「バグ対応」などリスクが高く、開発に手間取るとそれだけ利益が減ってしまう可能性もありますが、元請けはそういったリスクをあらかじめ、或る程度まで見込んだ金額を提示できます。
依頼主がそれで納得するかどうかは別として、金額を提示できるというのはリスク発生時の損害を最小限に抑えられる可能性がある、という点で元請けの大きなメリットとなります。

メリット3 効率的な要員確保ができる

プロジェクトには大小、色々な規模のものがあります。小さければ数人程度、大きければ数百人という要員が必要になることもあります。もし、これらの要員を全て自社の社員だけで対応するとなると常時、数百人の要員を抱えていなければならないことになります。そうなると人件費が大きな負担となります。
大量の要員を常に抱えた状態で小規模プロジェクトしか注文が無かったら仕事がない社員を大量に抱えることになり会社全体として大きな損害がでてしまうでしょう。ですので、自社要員は開発管理を行う要員だけとして実際に作業をするのは「下請け」としておけば、そのプロジェクトに必要な要員だけ下請けを頼めば済むので効率的な要員確保ができるのです。

メリット4 様々な種類の注文に対応できる

システムにも色々な種類があります。販売管理、在庫管理、生産管理、経理、人事など注文がくるシステムは多岐にわたります。そういった各種の要望に対し適切な知識を持った要員を確保するには自社要員だけでは、とても無理というのが実情です。
しかし下請けの中から注文内容に対し適切な知識と技術を持った下請けを選択するようにすれば、様々な注文にも応じられるようになるのです。

デメリット1 開発の全責任を負わねばならない

システムの開発作業というのは常にリスクを抱えています。事前に何回も確認し綿密に計画を練っていても神ならぬ人間には完璧ということはないからです。実際に詳細設計の段階やプログラム作成の段階で、それまで全く気付かなかった問題が発覚し「仕様の見直し」「設計のやり直し」「プログラムの作り直し」という事が起こることは珍しくありません。
それは最初から最後まで当初のスケジュール通りに進んで終わったプロジェクトなど無い、という事実が物語っています。それが「想定範囲内」であれば、あらかじめ見込んでおいた見積もり金額内に収まり、問題はありませんが、想定を超える「やり直し」が発生した場合、全ての開発責任は元請けにありますので元請けが損をかぶらねばなりません。

また、そういった事態になると元請けは依頼主に対しての説明責任もありますので非常に辛い立場に立たされることにもなります。特に開発が終了し既に本番稼働が始まっているシステムでバグが原因でトラブルを起こした場合、その後始末も全て元請けがやらなければなりません。
本番稼働後にトラブルが発生しシステムが使えなくなってしまうと依頼主の業務に大きな支障が出る可能性がありますので、依頼主から損害賠償を請求されることもあります。例え、そのバグが下請けのメンバーがやってしまったことであっても、です。元請けは利益を上げやすい一方、あらゆる意味で危険度も高いのです。

下請けのメリット・デメリット

上下関係で見れば下になってしまう下請けにもメリット、デメリットがあります。

メリット1 営業費用を抑えられる

下請けは元請けから仕事を請け負います。従って下請けの営業は元請けの会社に対してだけ営業を行えば済みます。しかし元請けの営業は世間に沢山ある、一般企業を回らねばなりません。つまり下請けは営業にかかる費用が少なく済むのです。

メリット2 常に一定量の仕事を確保できる

下請けは元請けを何社か顧客として持っていれば、どこかに仕事があることが多く、仕事が途切れることがありません。しかし元請けは一般企業が顧客なので常に仕事があるとは限りません。
常に何等かの仕事がある、ということは社員の稼働率が安定的に高くなり、それだけ収入も安定して得られるという良い結果を招きます。

メリット3 上流工程に加わることが少ない

システム開発の中で最も重要で大変なのは上流工程の中の要件定義作業です。この作業結果の品質でプロジェクトがうまくいくかどうかが決まる、といっても過言ではありません。それだけ重要な工程ですので責任も重くミスは許されません。
しかし要件定義作業は元請けが行うことが多く、下請けが行うことは滅多にありません。何故なら要件定義の結果に従って見積もり金額が計算されるので、元請けがやらなければならない作業だからです。下請けはこの作業に関わらずに済むので、高スキルな人材を確保しておく必要がなく、かつ責任を問われることもないのです。

デメリット1 契約条件の変更ができない

下請けは、よほどのことがない限り、最初に提示された条件、金額で仕事をしなければなりません。ですので、想定外の事態が発生した場合でも追加費用の請求はできないことが多く、損失となります。最も、当初は想定されていなかった作業の場合、交渉次第によっては追加請求が可能な場合もありますが、それは例外的なケースです。

デメリット2 元請けの業績が自社の業績に影響する

不況などで一般企業が設備投資を抑えている時期には、元請け業者も業績を上げられません。いくら元受け会社を複数、顧客として持っていても、どこも仕事がない、となると下請けも仕事がなくなってしまいます。かといって下請けには独自に仕事を取ってくる営業力はありません。つまり元受けの業績が直接的に自社の業績に影響してしまうのです。

デメリット3 元請けから切られてしまうことがある

例え元請けが仕事を取ってきても特殊な分野である場合などでは、声がかからないこともあります。
また下請けとして出した要員が何等かの大きなトラブルを起こした場合は、その後、一切の仕事を回してくれなくなる可能性もあります。そうなると下請けは全く仕事を失ってしまうことになります。
特に近年はセクハラなどの問題に神経質になっている会社も多いので自社から出した要員が、そういった問題を引き起こした場合は、以後、一切の取引停止となることもあります。こういった「悪い噂」は広まりやすいもので他の元請けからも、切られてしまうことも有り得ます。そうなると自社の存続問題にもなりかねなません。

元請け・下請けの種類

元請けとなる会社は通常、一社だけですが「丸投げ」という全ての作業を1社の下請けに出す「一括下請け」は禁止されていますので下請けとなる会社は複数社になります。
そして下請けには更に以下の種類があります。

・一次下請け:元請けと直接に契約を結ぶ会社を指します。
・孫請け:一次下請けと契約し仕事をもらう会社を指します。

一次下請けだけでは要員数が足りない、或いは社内要員ではまかなえない特殊な技術が必要という場合に孫請けが発生することがあります。
また小さな会社では孫請け作業しか仕事がない、という会社もあります。孫請けは一次下請けが利ザヤを取ることが多く、結果的に工賃が一番、低くなります。ですので、同じ場所で同じ仕事をしているのに一次下請けの要員と孫請けの要員で賃金に格差がついてしまいます。
それが分かると孫請け要員のモチベーションが下がりますので「孫請け禁止」という規約を一次下請けの会社に課す元請けもあります。

下請け先を選定する際に押さえておきたいこと

元請けが下請けを選定する際、気を付けなければならないことが、いくつかあります。
それを以下に列挙します。

発注金額を妥当な金額にし、書面契約をすること

元請けが利益を出さなければならないのと同様に下請けも利益を出さなければなりません。ですので、下請けにもちゃんと利益が出るように発注金額を決める必要があります。
元請けが自社の利益を上げようとして下請けへの発注金額を抑えすぎると下請けは「安い金額でも利益の出る要員」しか出せなくなります。つまりスキルの低い要員しか出せなくなってしまうのです。
システム開発において注意すべき点として「そもそも可能なのか」という問題があります。例えば難しいプログラムがあったとしてスキルの高い人で5日かかる、という場合を考えてみます。そのプログラムをスキルの低い人に作らせる場合、10日という高スキルの人の倍の時間を与えれば良いと思ってしまう場合があります。

しかし、スキルの低い人には、そのプログラムを作るのは最初から不可能という場合もあるのです。ですので、いくら日数を増やしても出来上がってはきません。
こういったケースが出てしまった場合でも全ての責任は元請けにあるので、元請けが何とか対処しなければなりません。十分なスキルを持った要員を出してもらうためにも発注金額はお互いが納得できる妥当な金額にする必要があるのです。そして、それをしっかり書面にして契約することが必要なのです。

下請け要員のスキルを確認する

元請けは開発するシステムの内容により、適切なスキルレベルの要員を出してもらえるのかどうかを確認しておく必要があります。システム開発には必ず「ある程度のスキルがあれば誰でもできる部分」と「高スキルが要求される部分」があります。下請け各社に、どの部分を担当してもらうかを決めるためにも出してもらう要員のスキルを確認しておく必要があるのです。

十分な要員数が確保できるかを確認する

スキルも問題ですが人数も問題です。十分な人数が確保されていなければスケジュールは守れないからです。もし要員数が少ないと一人当たりの負荷が大きくなり、スケジュールが守れなくなる大きな原因となります。ですので、元請けは、あらかじめ「必要な人数」を計算しておき、下請け各社から十分な人数の要員を出してもらえることを確認しておく必要があるのです。

元請けには元請けの苦労があり、下請けには下請けの苦労があります。
システム開発という仕事は難しい仕事です。普通の生産業であれば「仕様通りの製品が出来上がるのは当たり前」の事であり賞賛されるべきことではありません。しかしシステム開発では「仕様通りの製品が出来上がる」のは稀なことであり、スケジュール通りに開発を完了させ顧客から何のクレームもなければ、それは賞賛に値することなのです。

このような難しい仕事をする場合、うまく役割分担をするのが何より大切なこととなります。それを計らうのは元請けの仕事ですが、実際に作業をするのは下請けの仕事です。本来は上下関係にある両者ですが、それぞれが協力し合わなければ成功は望めないのです。ですので、上下関係という枠を超えてお互いの立場に思いを巡らせ協力する姿勢が何よりも大事なのです。

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