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個人事業主は雇用保険に加入しなければいけない?必要性や手続きについて解説

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2023年02月13日

店舗などを経営している個人事業主の中には、アルバイトやパートタイマーなどの従業員を雇用するケースがあるかと思われます。

従業員を雇用する際には、雇用保険への加入が必須です。
フリーランスや開業主などの個人事業主であっても例外ではありません。
そこでこの記事では、雇用保険に関する以下の項目を解説します。

・雇用保険とは

・個人事業主が雇用保険に加入しなければならない条件とは

・雇用保険の加入手続き

・雇用保険の給付内容

・雇用保険に個人事業主本人は加入できる?

・従業員が辞めた場合の雇用保険手続き

この記事が役に立つ方

・将来的に従業員の雇用を検討している個人事業主の方
・個人事業主の雇用保険への加入について知りたい方
・雇用保険の加入手続きについて知りたい方

雇用保険とは

雇用保険は次の目的で設けられた制度です。
雇用保険制度は厚生労働省の管轄となります。

・働く人の生活および雇用の安定
・働きたい人への就職の促進および支援

雇用保険への加入者(働く人)の代表的な特典(救済措置)は次の2つです。

・失業給付(失業手当)
・教育訓練給付金

失業給付(失業手当)

失業給付(失業手当)は勤めていた企業を退職した際に、最寄りのハローワークにて手続きを踏むことで受けられる給付金の一種です。
※正式名称は「基本手当」

自己都合退職の際には、手続きから2ヶ月から3ヶ月後に失業給付の支給が開始。
会社都合退職の場合には、手続きの7日(待機期間満了)後から失業手当が支給されます。
※口座への入金はおよそ1ヶ月後

教育訓練給付金

キャリアアップや就職に役立つ可能性のある資格などの講座を受けた方を対象とした、受講料の一部を支給する厚生労働省管轄の制度です。
最寄りのハローワークにて手続きが必要となります。

一般教育訓練給付の場合、教育訓練経費の20%に充当する金額を受け取ることが可能です。
※上限金額10万円(年間)

参考資料
政府広報オンライン
専門実践教育訓練給付金の拡充であなたのキャリアアップを支援します
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201408/1.html

個人事業主が雇用保険に加入しなければならない条件とは

個人事業主が雇用保険への加入が義務付けられるのは、以下の2つの条件を満たした場合です。

・週20時間以上の所定労働時間
・31日以上の雇用見込み日数

週20時間以上の所定労働時間

1週間の所定労働時間20時間以上の従業員を雇用している個人事業主には、雇用保険への加入対象に含まれている可能性があります。

雇用保険被保険者の対象について次の表にまとめてみました。

区分

雇用保険被保険者対象外

雇用保険加入対象(条件)

無限責任社員

雇用保険の被保険者になることはできません

 

顧問

雇用関係が明確でないため、雇用保険の被保険者になることはできません

 

学生(昼間)

右の条件に当てはまる学生以外は、雇用保険の被保険者になることはできません

・学校卒業前の内定先への就職
※卒業後の継続勤務が条件
・通信教育
・夜間学校
・定時制

家事使用人

家事に従事することが主となる家事使用人は、雇用保険の被保険者になることはできません

 

公務員など

離職時の給与や諸手当が失業給付などを上回る公務員などの方は、雇用保険の被保険者になることはできません

 

臨時内職的に
雇用される方

受け取る賃金が家計の補助的なレベルであり、なおかつ継続した雇用でない場合には、雇用保険の被保険者になることはできません

 

授産施設の作業員

雇用保険の被保険者になることはできません

 

長期欠勤者

 

雇用が継続していれば雇用保険の加入対象
※賃金の発生は問われません

旅館や飲食店などの
従業員

雇用関係が成立していない方は、雇用保険の被保険者になることはできません

雇用が継続していれば雇用保険の加入対象

外務員、外交員、
営業部員

歩合給が主体の委託関係の際には、雇用保険の被保険者になることはできません

雇用が継続していれば雇用保険の加入対象

在日外国人

外国での雇用関係が成立した後の日本国内での勤務においては、雇用保険の被保険者になることはできません

雇用が継続していれば雇用保険の加入対象
※外国公務員、外国の失業補償制度適用者を除く

国外にて就労する方

 

出張もしくは派遣の場合、雇用保険の加入対象

外国人技能実習生

 

雇用が継続していれば雇用保険の加入対象
※特定活動の在留資格を持つ方

参考資料
厚生労働省・滋賀労働局「雇用保険被保険者の範囲」
https://jsite.mhlw.go.jp/shiga-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudou_hoken/koyouhokenn_hanni.html

31日以上の雇用見込み日数

31日以上の雇用見込み日数が明確な従業員を雇用する際には、雇用保険への加入が必要となるケースが存在します。
正社員はもちろんのこと、アルバイトやパートタイマーなどの非正規雇用においても同様です。

ただし雇用見込み日数が31日未満であっても、以下のパターンに当てはまる場合には「31日以上の雇用見込み日数」として認められます。

・雇用期間の定めが設けられていない
・雇用契約に更新規定が設けられており、31日未満の雇い止めが明文化されていない
・雇用契約に更新規定はなくとも、同じような形で31日以上雇用された従業員の雇用実績が記録されている

雇用保険の加入手続き

フリーランスを含む個人事業主の方がアルバイトなどを雇用した際には、雇用保険の加入と同時に労災保険への加入も必須です。

雇用保険と労災保険への加入後は、店舗や事業所が「一元適用事業」として扱われるようになります。
雇用保険の加入手続きの流れは次のとおり。

申請書類

提出先

提出期限

①保険関係成立届

・所轄の労働基準監督署

保険関係成立日の翌日より10日以内
※保険関係成立日とは、従業員が雇用保険の加入条件を満たした日です

②概算保険料申告書

・所轄の労働基準監督署
・所轄の労働局
・郵便局を含む銀行などの金融機関

保険関係成立日の翌日より50日以内

③雇用保険適用
事業所設置届

・所轄の公共職業安定所
※ハローワーク

設置日の翌日より10日以内

④雇用保険被保険者
資格取得届

・所轄の公共職業安定所
※ハローワーク

資格取得の事実が確認された日の翌月10日まで

必ず①⇒②⇒③⇒④の順番で進めてください。
①と②は同時でも問題ありません。

雇用保険の加入手続きを怠った際の罰則

雇用保険の加入条件を満たした従業員を雇用しているにもかかわらず、雇用保険の加入を怠った事業者には、以下のいずれかの罰則が科せられます。

・6ヶ月以下の懲役
・もしくは30万円以下の罰金

雇用保険料率の目安

従業員を雇用した個人事業主が納めることになる雇用保険料率の目安として、2021年4月1日から2022年3月31日に適用される数値を以下の表にまとめてみました。

区分

従業員負担

事業主負担

合計

一般の事業

1,000分の3
(0.3%)

1,000分の6(0.6%)
—–内訳—–
失業給付・育児給付
1,000分の3(0.3%)
雇用保険・荷事業
1,000分の3(0.3%)

1,000分の9
(0.9%)

農林水産・
清酒製造の
事業

1,000分の4
(0.4%)

1,000分の7(0.7%)
—–内訳—–
失業給付・育児給付
1,000分の4(0.4%)
雇用保険・荷事業
1,000分の3(0.3%)

1,000分の11
(1.1%)

建設の事業

1,000分の4
(0.4%)

1,000分の8(0.8%)
—–内訳—–
失業給付・育児給付
1,000分の4(0.4%)
雇用保険・荷事業
1,000分の4(0.4%)

1,000分の12
(1.2%)

参考資料
厚生労働省「令和3年度の雇用保険料率について」
https://www.mhlw.go.jp/content/000739455.pdf

たとえば一般事業にて給与の総支給額が300,000円(源泉徴収)の場合、以下の雇用保険料ととなります。

従業員負担額:900円
事業主負担額:1,800円
雇用保険料:2,700円

参考資料
ke!san「雇用保険料の計算」
https://keisan.casio.jp/exec/system/1324267303

雇用保険の給付内容

雇用保険に加入した従業員が受けられる給付のうち、代表的なものは次の4種類です。

・基本手当
・就職促進給付
・教育訓練給付金
・雇用継続給付

基本手当

一般的に失業給付(失業手当)と呼ばれているのが基本手当です。
基本手当は雇用保険を納めていた企業を退職(離職)した日よりさかのぼって、12ヶ月以上の被保険者期間が記録されている方であれば受給資格を有しています。

基本手当の給付日数

自己都合退職(全年齢が対象)

被保険者期間

所定給付日数

1年以上5年未満

90日

5年以上10年未満

90日

10年以上20年未満

120日

20年以上

150日

特定受給資格者(会社都合退職)および一部の特定理由離職者

年齢

被保険者期間/所定給付日数

30歳未満

1年未満:90日
1年以上5年未満:90日
5年以上10年未満:120日
10年以上20年未満:180日

30歳以上35歳未満

1年未満:90日
1年以上5年未満:120日
(2017年3月31日以前の離職日:90日)
5年以上10年未満:180日
10年以上20年未満:210日
20年以上:240日

35歳以上45歳未満

1年未満:90日
1年以上5年未満:150日
(2017年3月31日以前の離職日:90日)
5年以上10年未満:180日
10年以上20年未満:240日
20年以上:270日

45歳以上60歳未満

1年未満:90日
1年以上5年未満:180日
5年以上10年未満:240日
10年以上20年未満:270日
20年以上:330日

60歳以上65歳未満

1年未満:90日
1年以上5年未満:150日
5年以上10年未満:180日
10年以上20年未満:210日
20年以上:240日

就職困難者

被保険者期間

所定給付日数・
45歳未満

所定給付日数・
45歳以上

1年未満

150日

150日

1年以上から20年以上

300日

360日

基本手当日額(支給上限金額)

年齢

基本手当日額
(支給上限金額)

30歳未満

6,760円

30歳以上45歳未満

7,510円

45歳以上60歳未満

8,265円

60歳以上65歳未満

7,096円

仮に30歳未満の方で所定給付日数が90日、基本手当日額が6,760円の際には、6,760円×90(日)=608,400円を失業給付(失業手当)として複数回に分けて受け取る形です。
※所定給付日数内に再就職が決まらなかった場合のみ

就職促進給付

就職促進給付として「再就職手当」と「就業促進定着手当」、そして「就業手当」などが設けられています。

再就職手当

再就職手当は、基本手当の受給資格を持つ方が再就職を果たした際に受け取れる給付金です。
再就職には個人事業主として開業した場合も含まれます。

支給残日数

再就職手当の算出法

所定給付日数の3分の2以上

支給残日数×70%×基本手当日額

所定給付日数の3分の1以上

支給残日数×60%×基本手当日額

※基本手当日額の上限金額は6,120円です
(60歳以上65歳未満の方は4,950円)

就業促進定着手当

再就職手当の受給者が対象となる給付金です。
再就職先に6ヶ月以上の雇用が記録された方で、離職前の賃金日額よりも低下している際に支給される可能性を持ちます。

就業促進定着手当は次の計算式にて算出可能です。
離職前の賃金日額-再就職の日より6ヶ月間で支払われた賃金日額×歴日数
※月給制の場合

就業手当

基本手当の受給資格を持ち、なおかつ再就職手当の支給対象外(常用雇用以外の場合などで就業)の方向けの給付金です。
支給残日数が基本手当の所定給付日数の3分の1以上(45日以上)が受給資格です。
就業手当の計算式は以下のとおり。

就業日×30%×基本手当日額
※基本手当日額の上限金額は1,836円です
(60歳以上65歳未満の方は1,485円)

教育訓練給付金

雇用保険加入企業を在籍中の方や、退職後1年以内の方が受給可能な給付金です。
厚生労働大臣指定の講座を受けた費用の一部を国が負担してくれます。

対象となる講座例

支援費用の割合

・TOEIC
・インテリアコーディネーター
・中小企業診断士
・土木施工管理技士
・簿記検定試験(日商簿記)など

受講費用の20%
※最大10万円(年間)

・普通自動車第二種免許
・社会保険労務士
・行政書士
・宅地建物取引士資格試験
・介護職員初任者研修など

受講費用の40%
※最大20万円(年間)

・測量士補
・キャリアコンサルタント
・看護師
・調理師
・理学療法士など

受講費用の70%
※最大224万円

雇用継続給付

雇用継続給付の代表的なものとして、「育児休業給付」があげられます。
育児休業給付金は、育児休暇を取得した、1歳もしくは1歳2ヶ月未満の子どもを持つ雇用保険被保険者が対象となる給付金制度です。

育児休業期間

育児休業給付金の計算式

育児休業開始~6ヶ月目

休業開始時賃金日数×支給日数×67%

育児休業開始から7ヶ月目以降

休業開始時賃金日数×支給日数×50%

参考資料
厚生労働省「雇用保険制度」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koyouhoken/index_00003.html

雇用保険に個人事業主本人は加入できる?

雇用保険は従業員(労働者)が対象となる保険制度のため、雇用主である個人事業主本人が加入することは認められていません。
企業などで働く人が失業や解雇に遭った際の救済措置であることがその理由です。

雇用保険に個人事業主の親族は加入できる?

基本的には個人事業主の親族も雇用保険の加入ができません。
ただし、次の要件を満たした際には、親族であっても雇用保険の加入が認められる可能性が生じます。

・事業主からの指揮や命令に従い、業務を遂行している
・他の従業員と同様の就労条件、就業規則であること
・役員などに就いていないこと

従業員が辞めた場合の雇用保険手続き

従業員が退職した際には退職日の翌々日より10日以内に、最寄りの公共職業安定所(ハローワーク)に以下の書類を提出することが義務付けられています。
フリーランスを含む個人事業主の方も例外ではありません。

・雇用保険被保険者資格喪失届
・雇用保険被保険者離職証明書

雇用保険被保険者離職証明書を提出し、ハローワークの受付窓口にて受理された際には、「離職票-1」と「離職票-2」が発行されます。

受け取った「離職票-1」と「離職票-2」の両方を、退職した従業員に渡す形です。
離職票は失業給付手続きの提出書類となるため、必ず受け取ってもらいましょう。
離職票のほか、「雇用保険被保険者証」も退職した従業員に返還する必要があります。

参考資料
厚生労働省「雇用保険被保険者離職証明書についての注意」
https://www.mhlw.go.jp/content/000763185.pdf

まとめ

こまで、雇用保険に関する次の項目を紹介していきました。

・雇用保険とは
・個人事業主が雇用保険に加入しなければならない条件とは
・雇用保険の加入手続き
・雇用保険の給付内容
・雇用保険に個人事業主本人は加入できる?
・従業員が辞めた場合の雇用保険手続き

フリーランスや個人事業主の方であっても、将来的にアルバイトやパートタイマーを雇用する可能性があるようなら雇用保険の加入と決して無関係ではありません。


ちなみに事業者が雇用保険に加入することで、次の助成金を受け取ることも可能です。

・雇用調整助成金
・産業雇用安定助成金
・トライアル雇用助成金
・キャリアアップ助成金など

詳しくは厚生労働省「雇用関係助成金」を参照してください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index.html

当記事が、従業員の雇用を検討しているフリーランスや個人事業主の方の参考になれば幸いです。

 

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