会社や組織に勤めていた場合は所属する組織が代理として税金を納めてくれていましたが、フリーランスになれば税金の計算から申請、納付まですべて自分で行う必要があります。支払うべき税金を知らなければ未納や脱税といった疑いをかけられてしまうだけでなく、所持金が不足しているため税金を納めることができないといったトラブルにも繋がりかねません。
フリーランスとして独立する前に、支払うべき税金の種類とその金額、そして賢い節税方法についてもしっかりと理解しておきましょう。
フリーランスが支払うべき税金の種類
フリーランスでも支払う税金
まずはフリーランス、サラリーマンに共通してかかる税金の種類をご説明します。
所得税
所得税は所得金額に応じてかかる税金です。所得には給与やクライアントから受け取った報酬のほかに、物品を販売して得た売上金やFXなどの取引によってえた利益などあらゆる収入が含まれます。その中から、交通費や仕事に使用する機材の費用などの経費と各種の控除金額を差し引いた金額が所得となります。
控除には、誰もが共通して適用される「基礎控除」のほか、特定の条件を満たす場合のみ適用されるさまざまな控除があります。基礎控除額は一律38万円です。そのため、年間の所得額が38万円に満たない場合は所得税を納める必要はありません。
所得税の税率は、所得額によって異なります。税率はたびたび変更されるため、毎年国税庁のホームページでその年の税率を確認するようにしましょう。
住民税
住民税は都道府県および市区町村に対して納める税金です。前年の所得額に応じて計算する「所得割」と、住んでいる地域に応じて計算する「均等割」、さらに2024年までは東日本大震災に伴う「復興特別税」の3種類があります。
所得割の税率は所得額の10%です。均等割は「市町村民税」と「道府県民税」の2種類から構成されており、「市町村民税」は3,500円、「道府県民税」は1,500円です。(2018年10月現在)
住民税にも所得税同様基礎控除があります。住民税の基礎控除額は一律33万円なので、所得税は免除されても住民税は支払わなければならないというケースもあります。
フリーランスだけが支払う税金
次にサラリーマンにはなく、フリーランスだけが支払う税金についてご説明します。
個人事業税
個人事業税は事業所の所在地として登録している都道府県に納める税金で、年間の所得が290万円を超える場合にかかります。
個人事業税の税率は業種によって変わります。さらに業種によっても具体的な業務内容によって税率が変わる場合もあります。また、そもそも税金のかからない業種もあり非常に計算がややこしくなっています。主税局や各都道府県のホームページから業種ごとの税率について確認しておきましょう。
消費税
消費税は、以下3つの条件のいずれかを満たす場合に納付義務が発生します。
消費税納付の条件
- 2年前の課税売上高が1,000万円を超える
- 上の条件に該当しなくても、1年前の1/1 ~ 6/30までの課税売上高と給与支払額の両方が1,000万円を超える
- 「消費税課税事業者選択届書」を提出している
消費税は原則、フリーランスになってから最初の2年間は免税となります。ただし、以下4つの条件のいずれかを満たす場合は独立後2年以内であっても納税の義務が発生します。
事業開始2年以内に消費税納付義務が発生する条件
- 起業時の資本金が1,000万円以上、または同年度内に出資した額が1,000万円以上である
- 特定新規設立法人である
- 独立から2年間に調整対象固定資産の仕入れを行っている
- 個人事業主である、または12月決算の法人である場合、前年の1月1日から6月30日の間の課税売上が1,000万円以上である
節税のポイント
フリーランスは自分で税金の計算をしなければなりません。だからこそ、節税のポイントを知って賢く資金運用することが肝心です。
ここではフリーランスが知っておくべき、節税対策の方法をご紹介します。
青色申告を行う
確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2通りの方法があり、どちらかを選ぶことができます。青色申告を行うと、次のような控除を受けることができます。
特別控除
帳簿の付け方によって65万円、または10万円が控除されます。
赤字の繰り越し
赤字が出た場合、その損失を最長3年間、翌年以降の所得から差し引くことが可能です。例えが平成25年に100万円の赤字、平成26年に200万円の赤字、平成27年に300万円の黒字となった場合、平成27年の課税所得額を0にすることができます。
家族への給与を経費として非課税に
妻や子供など、生計と共にする家族への給与を経費として収入から控除することができます。白色申告であっても家族への給与を経費として計上できますが、配偶者の場合は86万円、そのほかの親族の場合は50万円と控除できる給与額に制限があります。一方青色申告の場合は基本的に給与額の上限はありません。
資産の一括償却計上
机や椅子、パソコンや自動車といった資産を購入した場合、通常であれば耐用年数の期間で徐々に償却しますが、一括償却資産として計上することで耐用年数に関係なく3年間で償却することができます。
家賃・光熱費の経費化
自宅をオフィスとして使用している場合、明らかに業務に使用していることが認められれば家賃や光熱費を経費として計上することができます。
かつては青色申告は必要書類が多く手続きが面倒、白色申告は節税効果はないものの手続きが簡単といったメリット・デメリットがありました。しかし2014年から白色申告でも帳簿の提出が必要になったため、白色申告のメリットはほぼなくなりました。最近では面倒で難しい帳簿付けも会計ソフトを使用することで比較的簡単にできるようになったので、青色申告を選択するのがベストです。
消費税課税事業者になる
2年前の課税売上高が1,000万円を超えず、1年前の1/1 ~ 6/30までの課税売上高と給与支払額の両方が1,000万円を超えなければ消費税を支払う必要はありません。ただし消費税課税事業者になることで、事業で使用するため高価な機材を購入したりして支払った消費税が、報酬として受け取った消費税よりも多くなった場合、その差額分が還付されます。
消費税課税事業者になるには、「消費税課税事業者選択届」を提出します。ただし、消費税課税事業者になると2年間は免税事業者に戻ることはできません。還付によって得られるメリットと消費税を支払うことのデメリットを十分に考慮することが大切です。
社会保険料控除を利用する
健康保険料や年金として支払った費用を社会保険料控除として所得から差し引くことができます。
健康保険は国民健康保険のほか、業種ごとの健康保険組合やサラリーマン時代に加入していた健康保険組合など好きなものを自分で選ぶことができます。保険料から加入する健康保険を選ぶのがいいでしょう。
また年金は国民年金のほか、国民年金基金や確定拠出年金などいくつかの種類があります。複数の年金に加入すればそれだけ控除される金額も大きく、節税効果が高くなります。
税金のトラブルを回避して賢く節税を
フリーランスにはサラリーマンの時に納めていた税金だけでなく、フリーランスになったことで納めなければならなくなる税金があります。さらにその手続きの全てを自分自身でやらなければなりません。漏れなく納税することももちろん大切ですが、払いすぎることのないよう、また利用できる控除はうまく利用して賢く節税しましょう。