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フリーランスにも追い風。政府が推進する「働き方改革」のメリットと実施例

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2018年01月19日

最近、TVなどで「働き方改革」という言葉がよく取り上げられるようになっています。政府が進めようとしている働き方改革は、どういう内容で、なぜ今行われようとしているのでしょうか。

今回は、働き方改革が行われようとしている理由やメリット、そして改革の現状について見ていきましょう。

なぜ、「働き方改革」なのか

「働き方改革」という言葉がさまざまなところで聞かれるようになっています。「働き方」をどう改革しようというのでしょうか。これはどういったもので、どういう背景から行う必要が出てきたものなのでしょうか。

働き方改革とは

政府が進めている「働き方改革」とはどういうものでしょうか。厚生労働省では「一億総活躍社会の実現に向けた最大のチャレンジであり、日本の企業や暮らし方の文化を変えるもの」としています。女性や男性、高齢者や若者に限らず全ての人が一人一人のニーズにあった形で働けるようにするということが掲げられています。

つまり、働き方改革では従来の「フルタイム」「パートタイム」などの働き方から、より個人個人のニーズにあった働き方をライフステージに応じて選べるようにするということを目指しています。

これは、欧米の先進的な働き方をモデルにしています。例えば、オランダでは「労働時間調整法」と呼ばれるものがあります。この法律に基づいて、労働者は自らの労働時間を自由に短縮したり延長したりすることが出来るようになっています。

また米国では「ギグ・エコノミー」と呼ばれる仕組みが広がりを見せています。これは、労働者が企業に属さず、仲介サービスを利用しながら企業の仕事を請け負うものでフリーランスとよく似ています。これによって、従来の雇用制度に基づく労働に比べてはるかに自由度の高い仕事が出来るようになっています。米国では、「フレキシブルワーク」の実現に向けては、国や企業が全面的に推進を行っている現状があります。

このように、欧米ではすで先進的に行われている改革を我が国でも国が主導して進めて行こうとするものが働き方改革です。

働き方改革を行う背景とは

では、今なぜこういった働き方改革を進める必要があるのでしょうか。働き方改革を進めるようになった背景には以下のような理由があります。

  • 労働人口の減少による労働力の不足
  • 長時間労働などワークライフバランスの欠如
  • 労働生産性の低下
  • 働き方の多様化

それぞれを詳しく見ていきましょう。

「労働人口の減少による労働力の不足」とは、日本の人口が減少に転じる中で団塊の世代の引退や少子高齢化などで、実際に働く世代である15歳から65歳までの人数が減少していることを言います。これは出生率の低下などもあり、今後さらに急激に進展することは確実です。これによる労働力の不足は深刻な課題となってきます。

また、「長時間労働などワークライフバランスの欠如」も大きな問題です。先の電通での過労死の事例などもそうですが、長時間労働により心や身体を病んでしまい、最悪の場合自殺ということにつながるケースも数多くあります。今や「過労死」という言葉が英語になっているように、これは日本では非常に顕著なもので問題となっています。

労働生産性の低下。これも大きな問題です。昨年末の日本生産性本部の発表によると「日本の労働生産性はOECD加盟35カ国中20位で、先進7カ国では最下位」となっています。この要因については諸説ありますが、長時間労働などが一因であるという可能性があります。

そして、働き方の多様化。とくに我が国では従来は、新卒一括採用と終身雇用が主で、それ以外の働き方は少数でした。しかし、今や非正規雇用が全体の4割となっています。また、育児や介護などライフステージごとに働き方を変えたいというニーズも多くなっており、そういったことにフレキシブルに対応できることが求められています。

このように、政府が働き方改革を進める背景にはさまざまな課題があります。

働き方改革によって得られるメリットとは

では、働き方改革を進めることで、これらの課題に対してどういったメリットが得られるのでしょうか。ここでは、働き方改革を進めることで、実現できると考えられているメリットについてお話ししましょう。

働き方改革を進めることで得られるメリットにはさまざまなものがありますが、ここでは4つの項目を取り上げます。

  • 多種多様な働き方が可能となる
  • 介護や育児などを抱えていても離職する必要がなくなる
  • 仕事以外に費やせる時間ができる(ワークライフバランスの実現)
  • 生産性の向上につながる

このように、働き方改革ではさまざまな働き方を可能とすることで、出産や育児で離職せざるを得なくなった女性の労働力の活用が可能になるなどの効果が見込まれています。こういったことはワークライフバランスの実現といったことのみならず、少子高齢化が進み、労働人口の減少が進む中で、労働力を確実に確保していくという点でも大きな意味があります。

「働き方改革」の先進事例

さて、働き方改革を進める背景やメリットについてはお分り頂けたのではないでしょうか。日本全国には多くの自治体、企業があり、その中では働き方改革の取り組みを先進的に行っている事例があります。

働き方改革の実施例

まずは働き方改革の先進事例のいくつかを紹介します。ここでは、自治体と民間企業に分けて取り上げます。

兵庫県

兵庫県では、阪神大震災以降の有効求人倍率が県政史上最低の0.32を記録したことなどにより、政労使が一体となって働き方の改革を進めています。「ひょうご仕事と生活センター」を通じて中小企業中心に育児期の女性就業率を上げるための企業への支援など、多様な働き方をサポートするための施策を進めています。利用率も着実に伸びています。

SCSK株式会社

SCSKでは、IT関連のシステム開発企業であるという業態もあり、長時間勤務が常態化していました。こういった現状に対して全社あげて「業務見直し」「フレックスタイム制の導入」「ノー残業デーの推進」などを進めた結果、残業時間の半減や、有給休暇の取得促進などの結果を実現できました。

このように、自治体や民間企業で積極的に取り組みが開始されています。

こんな面白い制度もある

面白い制度を設けることで、効果的に働き方改革を進めている例もあります。少し紹介しておきましょう。

6時間労働制

株式会社スタートトゥデイが行なっている取り組みは、1日6時間労働制(ろくじろう)です。この制度では、朝9時からお昼休み無しで勤務し、午後3時に仕事が終わっていたら帰宅できるというものです。また、仕事が終わらない社員がいる場合は、皆で協力して終わらせるようになっています。

パラレルワーク

近年、多くの会社で副業を認めるという流れが起こってきています。株式会社エンファクトリーでは、社員に積極的に副業を推進しています。例えば、システムエンジニアがWebコンサルタントをするといった例があります。これによって、社員自らが稼ぐ力を身につけ、プロ意識やマネジメント能力を高めるという結果につながっています。

11ヶ月働いて1ヶ月休む

Webや印刷物のデザインを手がけるワヴデザイン社では、11ヶ月働いて1ヶ月休むという勤務形態をとっています。休みの間は自由に過ごすことが出来ますし、申請すれば他の会社で働くことも可能となっています。

「働き方改革」の現状と今後

官民協働で積極的に進められるべき働き方改革ですが、進捗の現状はどのようになっているのでしょうか。また今後はどのように展開していくのでしょうか。

働き方改革の現状は

ここまで働き方改革が進められている理由やメリット、そして実施例などを見てきました。では、改めて働き方改革の現状はどのようになっているのでしょうか。

現状で働き方の改革として取り組まれている内容としては、大きく以下のようなものとなります。これらは、項目によって進捗に早い遅いはありますが、いずれも大企業を中心に積極的な取り組みが始まっています。

  • 労働時間の短縮
  • 時差出勤制度
  • 短時間勤務制度
  • 定年後の再雇用制度
  • 非正規雇用者の処遇改善

こういった取り組みは、まだまだ始まったばかりで不十分な面が多いのですが、いずれも「ワークライフバランスの実現」「介護や育児との両立」など多種多様なライフスタイルに対応できるようにするためのものです。従来は、こういったものが整っていなかった結果、退職を余儀なくされるなどといったことが多く発生していました。

今後の展開はどうなる

働き方改革が現在、どういった状況にあるのか理解して頂けたのではないでしょうか。この現状を踏まえて、今後はどのように展開していくのでしょうか。

働き方改革に関連して、今後取り組みが進むと予想される内容には以下のようなものがあります。

  • 同一労働同一賃金制
  • 労働時間の上限規制
  • テレワーク
  • フリーランスの推進

同一労働同一賃金制

同一労働同一賃金制は、非正規雇用の待遇改善という意味合いでも進めることが必要だと考えられます。

労働時間の上限規制

労働時間の上限規制については、現状では労使間の協定があれば1ヶ月45時間・年間360時間までの時間外労働が可能とする36協定がありますが、現状ではそれを逸脱しているケースも数多くあり、解決が急がれます。

また、長時間勤務が問題になっているものの一つに教育現場があります。教育現場では教職員の過負荷が問題となっていますが、これについては給特法で定められている残業手当が実質無きに等しいなど制度上の問題もあります。

テレワーク

テレワークは現在も始められており、さらには厚生労働省でも地方創生の一環として検討が進められていますが、多種多様な働き方を実現する方法の一つです。また、これは災害時の在宅勤務といったBCPの観点からの重要性も含んでいます。

フリーランスの推進

フリーランスは2018年の税制の改正に伴い、基礎控除額が38万円から48万円に引き上げられます。合計所得金額が2,400万円以下の人が対象となるため、実質的には減税となる人が増えるでしょう。(青色申告者は電子申告をすることが必要)

しかしフリーランスで働く人を増やすには、そもそも、企業がフリーランスに対して仕事を発注しやすくする施策が重要となります。トラブルが発生した時の補償の問題や、情報漏えいなどのセキュリティ事故を担保しつつ、どのように個人(個人事業主)に仕事を発注するか、などが問題です。

フリーランスには、在宅でWEBデザインやグラフィックデザイン等の仕事をするようなスタイルと、客先に常駐して、客先が受注したプロジェクトに参加し、システム開発やゲーム開発を請け負うというようなスタイルがありますが、生活を支える程の収入を見込める仕事としては、やはり客先常駐型が主流となっています。その際、直接フリーランスと契約を行う企業も増えてはいますが、現状では、WEBサービス企業や、スマートフォンゲーム制作を主体とした企業の一部に限られており、メーカーや大手SIerなどはやはり先の問題から、直接契約を行うことにためらいがある企業はまだまだ多いです。その為、自ら営業活動を行ったり、仕事を探す事が難しいフリーランスのITエンジニアは、エージェント経由などでプロジェクトに参画する人がほとんどでしょう。

フリーランスになったら登録すべき最強エージェント5社

それ自体は問題ではありませんが、企業がもっと、フリーランスと直接契約をし易い環境になることで、フリーランスで働くことの自由度も増えていくのではないでしょうか。ただし、それは同時にフリーランス=個人事業主としての責任も生じる事となります。それでも、本質的なフリーランスの推進を行うために、フリーランスで働く人の社会的信頼度を向上させる必要があるでしょう。その為には、企業がもっとフリーランスを受け入れやすい体制作りを行う必要があると同時に、フリーランスで働く人自身の意識改革も必要だと思います。

まとめ

政府が進めている「働き方改革」では、男女や年齢を問わず個人個人のニーズやライフスタイル・ステージに応じた働き方を選ぶことが出来るようになることを目指しています。この改革が行われるようになった背景には「少子高齢化による労働力不足」や「ワークライフバランスの欠如」などが挙げられます。

働き方改革を行うことによるメリットは以下のようなものがあります。

  • ワークライフバランスの実現による「豊かさ」「満足度」の向上
  • 労働生産性の向上による国際競争力の強化
  • 多種多様な働き方が可能になることによる労働力の確保

現状での改革の取り組みは、いろいろと先進事例やユニークな制度などの取り組みはあるものの、まだまだ一部にとどまっていると言えます。今後はさらに取り組みが進められることは間違いないでしょう。

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