バブル時代の学生は、就活時にもらった内定の数を、まるで彼らが幼き頃のビックリマンチョコに付いてきたシールのコレクションを自慢するかのごとく競い合っていました。
企業も企業で、内定を出した学生を取りこぼさないよう潤沢な交際費を投入し食事や旅行など、今なら大企業の社長でも味わえないレベルの接待に明け暮れていたとか…。
この時代に社会人となった人たちは、まるで熱病に冒されたかのような浮かれた時代を若くして味わったがために、バブル崩壊の後、多くの人が地獄を見ることになります。
しかし、そんな浮き沈みの激しい時代を送った彼らも40代後半から50代、そろそろ社会人としてのゴールを意識し始める時期に差し掛かっています。それでもなお、あの頃を「いい時代だった」と振り返る人は少なくないでしょう。
一方、現在若手から中堅と呼ばれるITエンジニアたちが学生の頃は、バブルの陰など微塵もなく、「就職氷河期」の状態がもはやデフォルトとなってしまい、内定を取るにもひと苦労という時代を生き抜いてきました。
ようやく内定を取って喜びを胸に働き始めた会社も、昇給、昇進もままならず、かつてのように定年まで面倒を見てくれるわけではありません。
そんな、今や将来に対して希望の持ちにくい若手から中堅のITエンジニアは、会社が面倒を見てくれない以上、自分の道は自分自身で切り拓くより現状を打開することはできません。
その行動のひとつが転職活動であり、就職氷河期ゆえに叶わなかった新卒就職へのリベンジなのではないでしょうか。
そんな彼らを、「いい時代」を生きた先輩方が「根性なし」と呼び、「若者のクルマ離れ」に代表される「若者の××離れ」とその気質の変化を嘆きます。
ならば、報われないのを分かっていて働き続けるのが善なのか?給料が上がる保証もないのに無理してローンを組めますか?と反論したならばきっと、はっと気付いてくれるかも知れません。
そもそも、先輩たちの頃とは時代も違えば考え方も変わってくるものなのです。
「空前の売り手市場」が転職活動を強力に後押し
近年、日本経済は一時のどん底の時期を脱し、企業は設備投資を積極的に行うようになってきました。加えて、ITが人々の生活の末端にまで普及するようになり、それらを担うITエンジニアの不足が深刻な問題となっています。
「理系離れ」が進んでいると言われているように、理数系の学習を遠ざけられてきた世代が続々と社会に出てきたこと。
「デスマーチ」、「ブラック企業」と言ったIT企業のネガティブなイメージが奇しくもインターネットを通じて流布されてしまったことなど原因は様々ですが、最も大きな原因は不況を理由に採用を控えてきた企業がそのツケを払わされていることに他なりません。
リクルートキャリアが発表した2016年1月の転職求人倍率は1.66、インターネット専門職では4.85倍と、特にIT関連で高い数値となっており、現在「空前の売り手市場」となっています。
新卒時に辛く苦しい就職活動を強いられたITエンジニアにとっては、叶わなかった夢へのリベンジのチャンスであると同時に、今、自身を取り巻く環境に不満があるならば、軌道修正をしてITエンジニアとしての人生をより充実したものに変える絶好機なのです。
転職市場の売れっ子「エンジニア」転職のコツ6つ
【参考】TechRacho:転職市場の売れっ子「エンジニア」転職のコツ6つ(2014.06.17)
現在、ITエンジニアの転職が空前の売り手市場だからこそ、この機を活かして納得のいく転職をするための6つのコツをご紹介します。
モテモテであることの自覚
巷では、就職活動をしている学生が売り手市場と報じられているようですが、ITエンジニアの場合はそれとは比べ物にならないほどの活況です。
理由は言うまでもなくITエンジニアの絶対的な不足。多くの企業が即戦力で使えるITエンジニアを喉から手が出るほど欲しがっています。従って、かつての就職氷河期にことごとく恋敗れた頃とは打って変わってモテモテの時代が到来しているのです。
だからこそ、妥協せず、様々な会社の社風や条件を吟味し、自身がいきいきと働ける環境を選択するようにしてください。
何をもって転職[成功]とするか
転職が珍しくなくなった時代とは言え、転職の目的と意味を自分自身でしっかりと決めておかなくては、仮に新しい職場に転職したとしても、隣の芝が青く見えるとの同じように、また何かに不満を感じ転職を繰り返す結果となってしまいます。
転職理由は、「もっと給料が欲しい」、「やりがいのある仕事がしたい」、「もっと休みが欲しい」など別に難しいものである必要はないのです。
目的意識をハッキリさせてからの転職活動の方が、採用側にも意志が明確に伝わりパンチのある印象を残すことができるでしょう。
一人でやらない
転職活動は、学生の頃の就職活動と異なり、限られた時間を有意義に使わなくてはいけません。一日の大半を仕事に費やしながらの転職活動では、勝手を理解したり情報収集をしている間に時間が過ぎてしまい機を逃すことにもなりかねません。
ですので、豊富な実績と情報量、そして、IT企業との太いパイプを持っているエージェントを活用することをおススメします。しかし、エージェントはいくらシステマチックになっていたとしても人を扱う仕事ですから、やはり担当者によって当たり外れが大きいのは否めません。
ですので、偏りのない情報収集とリスクヘッジを兼ねて複数のエージェントに登録しておきましょう。
募集を疑う
今、あなたが勤めている(辞めようとしている)会社の求人広告を見たことがありますか。「やりがいのある職場です!」など虚実織り交ぜたまるで罠のような誘い文句のオンパレードに辟易とした経験のある人も少なくないと思います。
とすれば、今あなたが応募しようと求人広告を見ている会社ももしかしたら、「うまい儲け話」のような心地よい殺し文句で誘い入れようとしているのかも知れません。
あくまで求人広告の内容は参考程度、必ず転職サイトの口コミをチェックして両面からの評価に目を通しておきましょう。少なくとも転職サイトの口コミまで歯の浮くような美辞麗句に満ち溢れていたら、「やりがい」の名のもとに苦役を強制する企業であるに違いありません。
あと、「募集してません」と明記されていない限り、思い切って応募するのもひとつの方法です。募集広告にかける費用も会社からすれば大きな負担ですので、ひょっこり「雇ってください」と現れたら思わぬ出会いへと発展していくかもしれません。
話すより、飾るより、まず見せる
職務経歴書は、ITエンジニアとしての経歴や実績をまとめた大事な書類であることには変わりなく、エネルギーを割いて、シンプルながらも、あなたのエンジニアとしての生き様を熱く表すものに仕上げるべきです。
しかしながら、「百聞は一見にしかず」と言うように成果物は実物を見せた方が手っ取り早いのも事実。さらに、採用側もあなたの力量を見定めやすくなります。ですので、面接の際に、ありのままの成果物を見せられるとよいでしょう。
強気でいく
「仕事」は何だかんだと言って、人生に大きな影響を及ぼすものですから、転職の決断も人生の中で何度も訪れることのない究極の選択だったと思いますし、転職活動も不安に苛まれながらの日々を過ごしている人も多いと思います。
でも、あなたの「今」は、あなたの「未来」を決定づける重要な瞬間。「今」をどう生きるかで、運命すら変えてしまうかも知れません。ならば、応募先にも弱気を見せることなく、妥協することなく、強気、強気で攻めていきましょう。
空前の売り手市場という時勢も、あなたを強く後押ししてくれるはずです。
最後に確認して欲しいポイント
ITエンジニアに限らず、多くの時間と労力を費やし、ひいては一生の中でも大きな位置を占める仕事が苦役ならば不幸以外の何物でもありません。
できることなら自分が納得のいく仕事を、納得のいく環境でやりたいと思うのは極めて自然な感情の発露です。現在、ITエンジニアが、かつてないほどの売り手市場となっていることに対して心が動くのは、それがあなたのITエンジニアとしての人生の転換期となる大きなチャンスであることの証です。
もちろん、売り手市場とはいえスキルの伴わない人材を採用するほど甘くはありません。来るべき時に備え、転職市場が欲しがるほどの揺るぎない実績とスキルを身に付けるべく日々研鑽努力に勤しんでください。