プロデューサーとしてシステム全般を開発・構築するシステムエンジニア(SE)、ネットワークインフラの開発・設計・改善などを得意とするインフラエンジニア、仕様書に沿ってコンピュータを動かすプログラムを書き込むプログラマー……。今日においてはさまざまな職種のITエンジニアがフリーランスで活躍しています。
しかし、独立したITエンジニアの中には、「より報酬の高い案件を受けたい」「評価をもっと高めたい」「大きなプロジェクトを動かしたい」といった思いを持っている方も多いのではないでしょうか。そういった方に身に付けていただきたいのが、PMスキルです。今回は、フリーエンジニアの価値を「勝ち」に変えるPMスキルについてお話をしていきます。
PMの役割を知る
「PM(プロジェクトマネージャ:Project Manager)」は、クライアントに任されたプロジェクト全体を統括する責任者のことです。「プロマネ」とも呼ばれます。フリーのITエンジニアに声がかかる案件には1人で対応するものから複数でチームを組んで対応するものまでさまざまありますが、プロジェクトマネージャは後者において全体をマネジメントする役割を担います。
PMが担う主なタスク
- リソースやコストの見積もり・プロジェクトの要件定義
- WBS(作業分解構成図)の作成
- 必要な人的・物的資源の確保
- メンバーへのタスクの割り振り
- プロジェクト進捗管理
- チェックなどによる品質管理
- クライアントへの説明
クライアントの課題をヒアリングして案件の予算・納期・ゴールなどの要件を定義し、プロジェクトの計画を立てたら、その計画を実現するために必要な人的・物的資源を確保します。そのメンバーを動かしながらプロジェクトを進捗させ、クライアントに成果物を納品するまでがPMの仕事です。
大規模プロジェクトで求められる3大スキル
プロジェクトが大きければ大きいほど、PMの役割は重要になります。特に規模の大きなプロジェクトマネジメントにおいて求められるスキルには、次の3つがあると言われています。
- 技術スキル……業務を遂行するために必要な専門分野の知識や、ソフトウェアやシステム、機器類を使いこなす能力。
- コンセプチュアルスキル……周囲の状況を構造的・概念的・俯瞰的に捉え、事象の本質を見極めて対応する能力。
- ヒューマンスキル……説得、プレゼン、ヒアリングなど、利害関係者と良好な関係を構築・維持するために必要な能力。
いずれか1つでも欠けてしまうと、規模の大きなプロジェクトを円滑にマネジメントすることが難しくなります。しかし、だからこそこの3つのPMスキルに優れたフリーのITエンジニアは、「価値が高い人材」として評価されるのです。
PMとして特に求められる能力
以下では、3つのPMスキルの中から、特に求められる能力について具体的にご説明します。
相手を納得させる力(ヒューマンスキル)
プロジェクトを円滑に進めるには、クライアント、プロジェクトメンバー、サプライヤーといったさまざまな関係者との密な連携が不可欠です。時にはメンバーに無理を強いたり、やり方を途中で変えたりしなければならないこともあるでしょう。そういった場合には、相手を納得させて関係各所の利害を調整する交渉力が必要です。
役割を徹底する力(コンセプチュアルスキル)
案件の性格にもよりますが、ほとんどのプロジェクトには何らかのトラブルが付きもので、事前の計画通りにはなかなか進みません。責任感からメンバーの作業を代わりにやってしまうシステムエンジニア(SE)なども少なくないですが、そのせいでより重要なタスクがおざなりになったり、マネジメント不徹底で進捗が遅れたりするのは本末転倒です。
経営者的な視点(技術スキル)
PMスキルを備えたITエンジニアとそうでないITエンジニアの一番の違いは、経営者的な視点かもしれません。PMには、「投資対効果は高いか」「採算が取れるのか」「どうすれば赤字をなくせるか」といった視点も必要だからです。中長期的な視点で判断を下してプロジェクトの採算性を高められるPMは、クライアントにとって非常に信頼の置ける責任者と言えます。
PMはキャリアパスの1つ
独立したITエンジニアというと専門領域の技術で勝負するというイメージがあるかもしれませんが、大型プロジェクトのマネジメントで価値を発揮するというのも選択肢の1つです。
PMニーズは日に日に高まっているため、PMスキルを伸ばしていければより大きな案件、より価値の高い仕事を受注できるようになるでしょう。より高い報酬・年収を目指して「勝ち組」になりたいフリーのITエンジニアは、キャリアパスの1つとしてPMスキルの習得を考えてみてはいかがでしょうか?