SE(システムエンジニア)を生業として駆け抜けた歳月、目の前の仕事を片付けるのが精いっぱいだったひよっ子は、いつしか頭角を現し、気が付けば部下を抱える立場となっていたという人も少なくないことでしょう。
きっとほどなくして管理職への声がかかり、SEとはかけ離れた業務に追われる日々が待っているかも知れません。こうして会社にどっぷり浸かって働いてきたSEも中堅どころとなり、周囲を見渡す余裕ができるようになると、自分の市場価値や先の見通しなどに思いを馳せ、大部分の人が「このままでいいのか」と考えるようになってきます。
こんなときに、同窓会などがあり学生時代の仲間の活躍を知ったら、この気持ちに焦りとも強迫観念にも近い感情が脳裏をよぎることでしょう。「このままではよくない」と思い立ったとき、まず頭を過るのが「転職」の二文字ではないでしょうか。
会社が期待に応えてくれることは稀
ただ、中堅どころとなったSEには、目の前の仕事以外にも考えなければならないことがたくさん出てきます。上を見れば、社内の人間関係に振り回され、時には社内政治に巻き込まれることもあるでしょう。
下を見れば、かつての自分と同じような右も左も分からない若手SEが右往左往しています。そして、自身にも結婚や子育て、住宅購入といった大きなライフイベントが待ち受けています。この立場になると、現在所属している会社での自身の「先」がほぼ見えてきます。
先輩を見ていれば何年先にどんな仕事をやっていて、どれだけ稼ぐことができるのか、おおよその見当は付きます。それが満足のいくものであれば、「転職」など考えることはないでしょう。今の会社での自分自身と、思い描く未来像が理想や満足いくものとは程遠かった場合にこそ、「転職」を意識するのです。
ただ、慣れ親しんだ環境を飛び出して新天地に飛び込むのは、大きな勇気とエネルギーを要することで、しかも成功する保証はどこにもありません。言うなれば転職は、進学や就職、結婚に勝るとも劣らない人生の大きなイベントの一つなのです。
最も安全なのは、理想や満足に程遠くても今の会社に留まって働き続けることです。余程のことがない限りは最低限でも生活レベルは現状を維持し、家族を食べさせていくこともできます。リスクを取りたくなければ「何もしないこと」が最良の策なのです。
しかし、会社があなたの期待に応えてくれることを過度に期待するのは禁物です。10年務めて何もなければ、その10年後も何もないと考えるのが常識で、もし、一念発起してSEとして急成長を遂げたとしても、成長したあなたに相応しいポストが用意されることは経営陣が大幅に刷新でもされない限り難しいと思うべきです。
それならば、あなたがSEとしての人生の岐路を迎えたとき、どちらを選択するでしょうか。
SEならば誰もが意識する「転職」
SEに限らず30歳前後は、様々なものが見えてきて、その先のことも色々と考えるようになる時期です。一つの環境にどっぷりと浸かってしてしまった自分に危機感を募らせ、果たして他社でも通用するのか気になり出すのもこの頃です。
特に職人気質の強い人の多いSEであれば、その思いはより強くなるのではないでしょうか。こうした「技術者」としての立場から転職を考えるSEも少なくありません。いずれにしてもSEならば転職は誰でも少なからず意識するものなのです。
大部分のエンジニアが「転職」に関して何らかの不安を抱えて働いている
転職サイト@typeが30歳前後の会員に行ったアンケートによると、
「30歳前後で転職を考えたときの不安」として最も多かった回答が「年齢相応に要求される職務経歴や自分の能力に自信がないことへの不安」で22.6%を占めました。
また、合わせて9割近くが何らかの不安を感じており、「特に不安は感じない」が12.9%に留まりました。同じ環境にどっぷり浸かってしまったSEが自身の技術に不安を感じるのも無理はありません。
その証拠に、先の質問で自身のスキルに不安を感じている人は、他の質問において「自分の能力を同世代の技術者と比較した場合、平均的または劣る」という回答をした人が多かったのだそうです。
SEが転職で目指すもの
同アンケートでは、「ズバリ、転職の目的」について尋ねています。この質問に対して、45.1%が「今よりワンランク上の職域にステップアップしたい」という現実的な回答をしました。他の回答も含め、半数以上がSEとしてワンランクもツーランクもレベルの高い仕事をしたいという切実な思いを感じ取ることができるものでした。
だからと言って、自身の技術を客観的に見ることが難しく自信がないために、いざ転職となると不安に駆られてしまっているのです。
SEが転職を成功させるためには
近年IT企業は、即戦力となるSEを積極的に採用するようになりました。しかし、採用側としては経験やスキルは去ることながら、その会社の企業文化や環境に適応し、長期に渡って活躍する人材になることを望んでいます。
企業側からすれば社員の育成に多くの投資を行っているわけで、どの企業も「すぐに辞めてスキルだけ持って行かれる」苦い経験をしているはずです。ゆえに、採用担当からすれば、「辞めない」人を見極めることに神経を尖らせているのです。
自分自身のキャリアを掘り下げる
転職に当たって今一度自分自身のキャリアを掘り下げ、自身の強みや弱み、改善点などを明らかにしましょう。俗にいう自己分析で、「就職活動のときにやらされた」という人も多いと思います。
しかし、自分史は、就活から10年余り、人生で言えば3分の1ほど積み上がったわけですから、当時とはまた違った結果が出るはずです。そして、自己分析を通じて、転職して何をしたいのかを漠然としてではなく具体的に考えてみましょう。
そうすれば、転職先で「こんなはずではなかった…」といったミスマッチや失敗を防ぐこともできますし、場合によっては「今の会社に残る」という選択肢も残しておくことができます。
会社選びのポイント
会社選びに当たっては、少なくともSEとしての側面、賃金等の待遇面など今の会社よりも満足を得られるものであるべきです。ならば、ウェブサイトや四季報、転職に関する口コミサイトなどからできる限りの情報を収集しましょう。
特に口コミサイトは、ネガティブな情報ほど盛り上がる傾向にありますが、「火のないところに煙は立たない」ので多少差し引きの上で参考にするとよいでしょう。
会社は「転職理由」から様々な要素を読み取ろうとしている
先に述べたように、採用担当者は、「辞めない」人を見極めることに神経を尖らせます、従って転職希望者には、転職理由を聞くことで様々な要素を読み取ろうとします。
なぜなら、転職希望者の中には、自分自身の能力を棚に上げて「仕事が合わない」「思っていたのと違う」「やりたいことができない」などもっともな理由をつけてすぐに去っていく人も多いからです。
転職理由にありがちな「スキルアップしたい」という理由も「今の環境でスキルアップできないのか?」、「自分でスキルアップする努力をしたのか?」、「ここでスキルアップできなかったら辞めるか?」など安易に答えてしまったら立ちどころに撃退されるような質問を返されることでしょう。
従って、転職理由を答える際は、その理由に対して自分は何をしたのか、改善努力をしたのかなど、明確な答えを持っている必要があります。
最後に確認して欲しいポイント
転職が当たり前となった時代にあっても、やはり「環境を変える」ことは、非常に大きな勇気を要する決断です。あなただけではなく、多くのエンジニアがいざ転職が現実味を帯びたときに同じように不安を抱えていることをこの記事から読み取ってください。
自分自身のSEとしての生き方を満足させるためにリスクを取ってでも一歩踏み出す勇気を踏み出せるかが転職を成功させる大きなカギとなると思います。