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ITエンジニアが「ブラック企業」に入らない為の、案件情報の読み解き方

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2017年02月08日

2008年、「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」(黒井勇人 著)がベストセラーとなり、映画化もされたことで「ブラック企業」という言葉は一気に市民権を得るに至りました。

「ブラック企業」と言えば、真っ先にイメージされるのが、劣悪な環境で、まるでボロ雑巾の如く酷使される社員の姿でしょうか。しかしながら、過酷な労働環境で知られる外資系の大手コンサルティングファームや、日本では人材輩出企業とまで呼ばれているリクルートなどをブラック企業と呼ぶ人は皆無です。

それは、過酷な労働環境やノルマであっても、それに対して社員が意義を感じ、かつ十分な報酬が与えられているからであり、転職する際には、履歴書を見た採用担当者の目が釘付けになるほど、その名に恥じない実力が担保されるからなのです。

「キツさ」だけを見れば、グローバル企業なら時差や祝日など、おかまいなし。まさに年中無休24時間営業を強いられることもあり得ます。

ですから、ブラック企業とそうでない企業を分けるのは、労働環境の他に、もうひとつ「給料や出世なども含めた『将来の希望』があるかないか」であるように思われます。

かつての日本のビジネスパーソンは、欧米から「エコノミック・アニマル」と揶揄されるほど勤勉に働き、「イヌイットに氷を売る」、「アフリカでストーブを売る」と恐れられるほどでした。

焼け野原からの復興、日本の奇跡的な高度成長の陰には、こうした困難や労苦を厭わない企業戦士の姿がありました。

当時の労働環境は、現在で言うところの「ブラック企業」よりも過酷であったに違いありません。しかし、大きな違いは、彼らには、日本の旧来の雇用形態である年功序列、定期昇給、終身雇用という、「今頑張れば将来いいことがある」という『将来の希望』と、最低でも家族の生活は保証される安心感が前提としてあったことです。

現在は、リタイヤし悠々と余生を送るかつての企業戦士に、『将来の希望』がなくても当時のように働けたかと聞けば、全員が「ノー」と答えることでしょう。

IT企業がすべて「ブラック企業」なわけではない

ほんの少し前までは時代の最先端を行く業界ということでIT企業が絶大な人気を誇っていましたが、今や「きつい」「帰れない」「給料が安い」の新3K職場のイメージが定着しつつあります。

その原因としては、ネットの掲示板等で「ブラック企業」の告発が日常茶飯事となり、業界や社内の人でなければ決して見ることのなかった「負の側面」も明るみになったことが挙げられます。そしてネットで槍玉に挙げられる「ブラック企業」に多くのIT企業が名を連ねているのです。

確かに、IT業界は建設業界と同じように「多重下請構造」ですから、元請けの企業はともかく下請け、孫請け、4次請け、5次請け…とピラミッドの底辺に行くほど、低賃金で過酷な労働を知られているのは想像に難くありません。

元請企業と下請企業の絶対的な力関係の差は、一人のエンジニアの力でどうにかできるものではないのです。

しかし、IT企業がすべて「ブラック企業」という訳ではありません。IT企業であることの利を活かして業務効率化に積極的であったり、最先端の技術を扱うエンジニアに対して最大限の敬意を払っている企業も数多くあることを忘れないでください。

IT業界は比較的新しく、創業期の企業が多い分、仕組みがついていかず「ブラック企業」的な側面が多分に顔を出すこともあるでしょう。

「悪事千里を走る」と言うように、そういった側面ばかりがネット上でデフォルメされて拡散されていることが業界全体のイメージを悪くしているのかも知れません。

その証拠に、年収ラボによると、2013年のシステムエンジニアの平均年収は598万円で、平均時給は2,399円(平均年齢38.4歳、平均勤続年数10.5年、総労働時間169時間/月)。

国税庁が発表している民間給与実態統計調査によると民間企業で働く人たちの2013年度の平均年収は約414万円ですので、エンジニアの年収はこの数字からみるに「まずまず高い」と言うことができます。

また、1カ月の就労日数を20日間とすると、1日あたりの労働時間は8.45時間となり、繁忙期や閑散期などでムラがあるのでしょうが、総じてさほど残業時間も長いとは言えません。現状は、騒がれているほどブラックな業界と言うわけではないのです。

また、平成26年11月に厚生労働省が発表した業種別の新卒者離職率、第1位が「宿泊業・飲食サービス」(52.3%)、第2位が「教育・学習支援」(48.5%)、第3位が「生活関連・娯楽」(48.6%)と続き、IT業界が含まれる「情報通信」は第11位(24.8%)でした。

一般的に大卒新卒社員の3年以内離職率の平均が3割と言われていますので、この数字も平均以下。これも、IT業界が、それほどブラックな業界ではないことの裏付けになるのではないでしょうか。

近年、新卒者離職率の上位を占めるのは、労働環境は厳しいのに賃金は一般的に低いことで知られている業界ばかりです。一方、「鉱業、採石業、砂利採取業」、「電気・ガス・熱供給・水道業」、「製造業」は、離職率が低く、肉体労働の側面もある「キツい」仕事だけれども平均年収が高いことが定着率の良さにつながっています。

これも先に述べた「頑張れば報われる」という『将来の希望』と無関係ではないでしょう。

したがって、「システムエンジニアになりたいのに、IT業界はブラックだから…」という理由で尻込みすることはないのです。案件情報から「ブラック企業」を見抜き、その会社を避けることができればしっかりとした企業に入ってキャリアを積み重ねていくことができるのです。

案件情報等から「ブラック企業」を見抜く

ここでは、案件情報等から分かるIT系の「ブラック企業」の特徴を挙げました。こうした企業には間違っても応募しないようにしましょう。

年中求人を出している

年中求人を出しているのは、年中離職者が出ている証拠です。「事業拡大のため急募」というコピーが年中表示されているようなら年中閉店セールをやっている店舗のようにご愛嬌では済まされません。企業の誠実さが疑われます。

創業年度に対して社員の平均年齢が低い

社員の勤続年数が低い証拠です。原因としては、ワンマン企業で、社歴の長い社員が力をつけてくると困るので切り捨てる。

社歴が長くなり人件費が高騰する前に切り捨てるなどといったことが行われていることが予想されます。つまり「長く働かれると困る」のです。

経験不問、未経験者大歓迎

大企業でさえ社員教育に苦労しているにも拘らず経験不問、未経験者大歓迎というのは、ハードルを下げないと人が集まらない実情と、特別な能力を必要とされない労働集約型の仕事が多い可能性が高い。

とは言いながら「使えない」と分かれば容赦なく切り捨てるのもブラック企業のやり方です。

勤務地や勤務時間の表記が不明瞭

ほぼ間違いなく下請けや特定派遣の仕事が待っています。過酷な労働環境で働くことを強いられ、しかも、頑張って成果を出したところで報酬に跳ね返ってくるわけではありません。まさに『将来の希望』のない職場である恐れが高い。

「夢や希望」といった抽象的なことばかり語られている

数字など具体的に会社を語れず、もはや「夢や希望」しか語ることがなくなっている証拠です。こうした場合、求人広告には笑顔で働く社員の写真が掲載されている場合が多いので注意しましょう。

営業利益率が低い

一時的なヒット作の影を引きずらず、継続的に利益を出せているかもチェックの対象です。受託開発中心のIT企業の場合は平均的な営業利益率は平均して5%程度と言われています。

このレベルなら昇給どころか、必要なツールまで経費削減の対象になりかねません。会社は利益が出てナンボ。利益が出ているからこそ、事業が継続し、社員もお客様も幸福になるのです。

転職サイトの口コミを参考にする

ややネガティブに流れる傾向にありますが、在籍していた社員の声ならば多かれ少なかれ本質をついている場合が多いのが転職サイトの口コミ掲示板です。

在籍者は所属している会社を、元社員は古巣のことを書くので、本来であればバランスのとれた論調になるはずですが、あまりに悪意に満ちていた場合は元社員の個人的な恨みが、あまりに礼賛ばかりのときは会社から情報操作が行われている可能性が疑われます。そうであれば鼻から選択肢には入らないと思いますが…

最後に確認して欲しいポイント

「ブラック企業」の定義は意見が分かれるところです。しかし、労働環境が過酷で、かつ、そこに『将来の希望』がなければ「ブラック企業」と呼んで差し支えないと思います。

ことIT業界に限って言えば事前に情報を得ておくことによって「ブラック企業」へ入社することは避けられます。きちんと情報を得ておけば、「ブラック企業だったらどうしよう」と恐れることはなくなるのです。

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