自身のキャリアを主体的に設計し、中長期的な視点にてキャリアを俯瞰する「キャリアデザイン」が注目されています。
働く人たちはもちろんのこと、離職防止などの目的で推奨する企業も存在するほどです。
当記事では、キャリアデザインに関する次の項目について解説していきます。
・キャリアプラン・キャリア形成・キャリアパスとの比較とそれぞれの特徴
・企業としてキャリアデザインを取り入れることで得られる2つのメリット
・企業としてキャリアデザインを取り入れることで生じるデメリット
・キャリアデザインを構築する際に押さえておきたい3つのポイント
この記事が役に立つ方
・キャリアデザインの必要性を感じ始めた方
・キャリアデザインとは何か?を理解したい方
(目的や必要性、類義語との違い)
・キャリアデザインにおけるステップや要素を把握したい方
キャリアデザインとは?
キャリアデザインは自身がどのような仕事をしていきたいか?どんな自分になりたいのか?を明確に設定し、実現に向けた行動を積み重ねる意味で使われる言葉です。
2000年代以降は終身雇用制度や年功序列制度が否定される傾向が高まり、成果主義を導入する企業が増加していることと決して無関係ではありません。
入社した企業に定年まで勤め上げることが難しくなり、働く人たちが自らのキャリアを自身の手で構築していくことが求められています。
キャリアプラン・キャリア形成・キャリアパスとの比較とそれぞれの特徴
キャリアデザインと似た言葉に「キャリアプラン」や「キャリア形成」、そして「キャリアパス」があげられます。
いずれも「キャリア○○」のため、区別がつかない方もいるかもしれません。
それぞれの大まかな違いを次の表にまとめてみました。
用語 |
概要 |
キャリアデザイン |
自身のキャリアをプライベートも含めて主体的に構築(デザイン)していくこと |
キャリアプラン |
将来に渡る自身の職業や働き方の計画(プラン) |
キャリア形成 |
仕事の現場や目標の達成に必要な能力(資格やリーダーシップなど)を取得していくこと |
キャリアパス |
企業内での昇進や新規プロジェクトの抜擢など、企業から働く人に対して示す育成計画 |
キャリアプラン
キャリアプランは将来に渡る自身の職業や働き方の計画です。
働き方には正社員としての転職のほか、フリーランスや起業も対象となります。
あくまでも「職業の計画」であり、プライベートは含まれないのがキャリアデザインとの違いです。
キャリア形成
キャリア形成は資格やリーダーシップなどの、仕事の現場や目標の達成に必要な能力を取得していくことを意味します。
キャリアデザインにも大きく関係する項目です。
キャリアパス
キャリアパスは企業内での昇進や新規プロジェクトの抜擢など、企業で働く人の育成を目的とした計画です。
キャリアパスは企業主体で決定されるため、キャリアデザインのように必ずしも働く人の意見が反映されるとは限りません。
キャリアデザイン
キャリアデザインは、仕事はもちろんのこと、プライベートも含めた主体的な構築(デザイン)です。
・将来の職業
・将来に希望する役職(ポジション)
・目標とする年収
・描いた自身にふさわしい価値観
・理想とするライフスタイル
上記の計画を実現するために何が必要なのか?現時点でどのような行動が求められるのか?を明確にすることが重要です。
細かいステップを設定し、状況によっては軌道修正しながら実現へと導きます。
キャリアデザインが必要な理由および目的
キャリアデザインが必要な理由および目的として、以下のようなものがあげられます。
・モチベーションアップ
・自己実現
・市場価値の向上
・転職リスクの回避
モチベーションアップ
キャリアデザインは近未来の自身の理想型を大まかに定めた上で、そこに近づくために何をすべきか?を考え、具現化していく作業です。
1日の時間の使い方や日々の業務の進め方、休日の過ごし方などを客観視することで、目標の達成に向けて不足していることが浮かび上がってきます。
それまでなら「コスパが悪い」と敬遠していたことも、自身の理想型につながると認識した瞬間から、積極的に取り組むように変わるかもしれません。
仕事やプライベートを楽しんでいる人には、同じように人生を謳歌する人たちが集まります。
そんな日々の変化を受け入れるうちに、知らず識らずのうちにモチベーションもアップしていることでしょう。
自己実現
キャリアデザインの構築は、主体的にものを考える習慣のきっかけとなり得ます。
「エラい人に言われたから」「有名な人が勧めていたから」という理由だけで商品やサービスを選択することも少なくなるかもしれません。
仕事の現場でも単に指示待ちをするのではなく、相手が求めているのは何なのか?次にどのように動いたらスムーズに進行するのか?を意識することで、相手からの印象が変わってきます。
そうした積み重ねのうちに、新たな仕事を任されるチャンスを得ることもあるでしょう。
大切なのは、常に準備を怠らないことです。
チャンスが訪れたときに充分な実力が発揮できるよう、心と身体を整えておきましょう。
健康管理には良質の食事や睡眠、定期的な運動の継続がカギとなります。
市場価値の向上
キャリアデザインは自身の市場価値の向上にも結びつきます。
自身の目標や理想型を設定する際に、環境が変わっても通用するスキルを身に着けることを加えておきたいところです。
市場価値は自身ではなく「他者が決める」ということを忘れずに、できるだけ客観的に自身のキャリアを見つめ直していくと良いかもしれません。
転職リスクの回避
キャリアデザインには、転職リスクの回避も含まれています。
年齢を重ねるほど、リーダーシップ能力の有無が問われる度合いが深まるのは否めません。
管理職の経験やプロジェクトのリーダーでの成果などは、前述した市場価値の向上にも大きく関係します。
何故ならば、一人でできる仕事量には限界があるためです。
自身の考えを言語化できることが、他者への正確な指示につながります。
特にテレワークや在宅ワークが推進される2020年代では、言語化能力は必須と言えるでしょう。
そのためにもビジネス書や自己啓発本ばかりではなく、純文学なども読むことをおすすめします。
資格
キャリアデザインを設定する際、人によっては資格の取得も目標の達成に必要なツールとなり得るかもしれません。
自身にとって有用な資格を選ぶ目安として、給与の「資格手当」の対象であることがあげられます。
たとえば不動産関連のお仕事であれば、宅地建物取引士。
タクシーやハイヤーの運転手なら、普通自動車第二種運転免許です。
将来の独立や起業、副業につながる資格には、行政書士や社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーなどがあります。
英語力をアピールしたい方であれば、TOEICのスコアも意識しておくと良いかもしれません。
企業としてキャリアデザインを取り入れることで得られる2つのメリット
キャリアデザインは個人はもちろんのこと、企業として取り入れることで、次の2つのメリットが得られます。
主体的な仕事への取り組み
キャリアデザインの構築は、従業員の主体的な仕事への取り組みへとつながります。
漫然と業務をこなすのではなく、自身の理想型に近づくために必要なタスクと認識してもらうことで、職場の雰囲気もポジティヴなものへと変化するかもしれません。
作業中の怪我や事故、気の緩みによるミスが減少することも期待できます。
早期の離職を防ぐ
希望に燃えて就職したのは良いものの、数ヶ月~3年ほどで退職するケースが少なくありません。
特に若手社員に多く見られる傾向です。
早期離職の防止としてキャリアデザインの提案が有効な方法となり得ます。
なりたい自分への目標の設定にて、現時点での業務が決して無駄ではないことに気づいてもらえるかもしれません。
上司や先輩社員との面談を定期的に実施していき、長期的な視点で見守ることが大切です。
この場合「飲みニケーション」は避けたほうが無難でしょう。
企業としてキャリアデザインを取り入れることで生じるデメリット
キャリアデザインを企業が取り入れることで、人材が流出する確率も高まるかもしれません。
「希望する職種が見つからない」などの理由で退職するケースだけでなく、スキルを獲得した後に他社への転職、独立や起業に臨むパターンも想定しておくことをおすすめします。
日本のプロ野球選手がアメリカのメジャーリーグに挑戦するようなイメージで捉えておくと理解しやすいかもしれません。
キャリアデザインを構築する際に押さえておきたい3つのポイント
キャリアデザインを実際に構築する際には、以下の3つのポイントを押さえておきたいところです。
・現状分析(現状認識)
・自身の理想型の設定
・目標達成に向けた行動
現状分析(現状認識)
キャリアデザインの構築は現状分析からスタートします。
過去から現時点に向けた自身のキャリアの洗い出しとして、次の項目を記していくと良いでしょう。
・これまでに経験した業務
・保有している資格やスキル
・得意なこと
・苦手なこと
・うまくいったこと(成功体験)
・思うようにいかなかったこと(その際にどのような行動を起こすか?)
文字にすることで自身の思考が明確になるため、メモなどに書き出してみてください。
自身を客観視する訓練にもなります。
大人でも客観視ができない方が非常に多いので、身につけておくと有利です。
自身の理想型の設定
現状分析が完了しましたら、自身の理想型の設定に進みましょう。
できるかどうかはさておき、とりあえず書き出していくことが大切です。
・○○歳で課長⇒○○歳で部長
・得意なことを生かした仕事をしたい
・通勤をせずに済む業務に就きたい(在宅ワーク、リモートワーク)
・早期リタイアをしたい(FIRE)
・起業後に成功者となる
・ユーチューバーで億万長者になる
・アイドルを恋人にする(声優さんと結婚したい)
特になりたい自分が描けない場合
将来どうなりたいか?と言われてもピンとこない方も少なくないでしょう。
そもそも子どもの頃に描いた夢を実現している人はそう多くありません。
野球の大谷翔平選手やサッカーの三浦知良選手みたいな方は別として。
特になりたい自分が描けない場合には、まず貯金をしていくことをおすすめします。
何らかのチャンスが訪れた際に、金銭面で諦めざるを得ないケースを避けるためです。
※学生の場合なら成績を上げておくことで進路の選択肢が広がります
たとえば前述のFIREや起業は資金がなければどうにもなりません。
ユーチューバーにしても、撮影用の機材や編集ソフト、スタジオレンタルやスタッフを雇用する費用がかかります。
スマホで適当に撮影した動画など誰も見向きもしません。
「○○歳までに○万円貯蓄する」というのも立派な目標です。
目標達成に向けた行動
自身の理想型が設定できましたら、目標達成に向けた行動を開始します。
たとえば通勤をせずに済む業務に就きたいのであれば、在宅ワークやリモートワークが可能な業種を選択することが大前提です。
業種によっては一定以上のスキルも求められるため、通常業務以外にも新たな知識を増やしていく必要もあります。
「貯蓄をする」ことが目標であれば、定期預金(普通預金からの自動引落)がおすすめです。
携帯電話料金などの固定費の見直しもしていくと良いかもしれません。
ちなみに健康管理の点においても食費はあまり削らないほうが無難です。
まとめ
ここまで、キャリアデザインに関する次の項目を紹介してきました。
・キャリアデザインとは?
・キャリアプラン・キャリア形成・キャリアパスとの比較とそれぞれの特徴
・キャリアデザインが必要な理由および目的
・企業としてキャリアデザインを取り入れることで得られる2つのメリット
・企業としてキャリアデザインを取り入れることで生じるデメリット
・キャリアデザインを構築する際に押さえておきたい3つのポイント
キャリアデザインの構築後は、未来から現在に逆算した考え方や行動を基本とすることが可能です。
膨大な情報を取捨選択し、その都度自身で判断する習慣をつけることにもつながります。
他者(メディアなど)に言われたことを丸呑みするのではなく、自身で調べて確認することが重要な分岐点となり得るでしょう。
当記事がキャリアデザインに興味を持たれた方の参考になれば幸いです。