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長続きさせる為に、あえて考えるフリーランスの「廃業」

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2017年02月08日

日々の研鑽努力を怠らず、自らの腕を磨き続けてきたエンジニアならば、いつか遠くない未来に自身の給料が割に合っていないこと気付きます。

 

そして今勤めている会社に居座っては、自身が当初目指していた「あるべき姿」には到底たどり着けないことも。しかし、いざ独立するとなると言葉で言うほど簡単ではありません。

多少たりとも不満を抱えていたとはいえ、自分の居場所であり、キャリアを積み重ねてきた会社には愛着があり、多くの仲間がおり、使っていたものには自分の魂が宿っているはずです。

こうした後ろ髪を引かれる思い、そしてフリーランスという未体験エリアへの挑戦に対する不安など、胸を引き裂かれるような様々な感情が去来するのです。

それほどまでに、多大な労力とエネルギー、そして人間ドラマを経てフリーランスになったものの、腕利きのエンジニアが群雄割拠し少ないパイを奪い合う世界の中で、思うように結果が出ない人も少なくないようです。

企業でさえも、創業から5年で80パーセント以上が淘汰され、10年後には生存率5パーセントとも言われる厳しい世界の中で、いきなり厳しい生存競争の中に放り込まれて、最初からうまくいくことなど稀なケースと言うことができます。

フリーランスになった時点ですでに「廃業」を意識すべき

独立してフリーランスとなった理由を聞かれたとき、多くの人が口にするのは収入面。

一般的に会社員時代は一つの案件を完遂するにしてもその報酬は会社に入り、そのうちの幾らかが社の賃金規程に従って支給されるシステムでしたが、フリーランスになれば、報酬がそのまま自分の収入となる、

すなわち、しっかり仕事を確保できていれば、諸々の経費を差し引いても収入額が激増するのがフリーランスになる最大にして最強のメリットです。

しかし、いざ大病を患ってしまったり、大口の顧客から契約を打ち切られてしまったら立ちどころに収入は激減し、仕事が立ち行かなくなってしまいます。

このように、フリーランスは、会社員時代と比べハイリターンである代わりにそれ以上に極めてハイリスクな立場なのです。

並々ならぬ決意で独立を果たしたフリーランスエンジニアにいきなり廃業を意識させるのは不謹慎であるという声もあるでしょう

。しかし、大相撲で横綱に昇進する力士にまず親方は最初に祝いの言葉ではなく、「引き際」について滔々と諭すのだそうです。このエピソードは、絶頂期だからこそ、引き際がいかに大切であるかを私たちに教えてくれます。

サンクコスト(埋没費用)が「廃業」の決断を鈍らせる

企業の10年生存率が5パーセントとも言われるように、事業は成功するよりも失敗することの方がはるかに多いのが数字が如実に示す現実です。

この現実を前にして、フリーランスエンジニアとて例外ではなく、常に「廃業」と隣り合わせの状況であることは言うまでもありません。しかし、「廃業」は一時的な撤退であっても、それが事業の完全なる失敗や人生の敗北を意味するわけではありません。

確率論で言えば失敗する恐れの方が遥かに高いわけですから、3割打者でも7割は凡退(=失敗)するのとそう違わない感覚で捉え、失敗の要因を分析し、思い当たるリスクを全て潰したのちに捲土重来を期するべきなのです。

でも、「廃業」の決断をする前に、首が回らないほど追いつめられてしまったら、再起の可能性は限りなくゼロに近付き、フリーランスを志した人生最大の決断に対し「あれは失敗だった」と結論付けざるを得なくなってしまいます。

しかし、残念ながら、全てを失ったのちに「廃業」するフリーランスエンジニアが後を絶たないのが現状なのです。

そんな憂き目に遭ってしまうフリーランスエンジニアが存在するのは、奇しくも独立を決めた時の志の高さが原因となっていることがほとんどで、「せっかくここまでやったのに…」といくサンクコスト(埋没費用)への強い思いが自分自身の首を絞めてしまうのです。

フリーランスになること自体が人生最大の挑戦であり、一生の中でそう訪れることのない大博打だったはず。さらに独立するまでにかかった費用や労力はとても金額換算では量れないほど大きなものであったことでしょう。

しかし、一度坂道を下りはじめると傍から見れば到底持ち直すことは不可能な事態に陥ってしまうことも良くあること。それを、「せっかくここまでやったのにもったいない」と思ってしまうことが「廃業」への決断を鈍らせてしまう最も大きな要因となるのです。

たとえ「もったいない」としても、これらは、取り戻すことのできないサンクコスト(埋没費用)。潔く諦めて、次を目指すいわゆる「勇気ある撤退」が求められるのです。

サンクコスト効果は、近年日本の電機メーカーでも見られました。ものの10年ほど前までは、日本の薄型テレビの技術は世界一で他の追随を許さぬほど圧倒的でした。

そこで、2011年の地上デジタル放送への完全移行や翌年のロンドンオリンピック等のスポーツイベントが目白押しであることによるテレビの買い替え需要を見込んで各メーカーが新工場を建設するなど「社運を賭ける」ほどの大規模な設備投資を行いました。

当時、テレビはようやく1インチ当たりの価格が1万円を切ったことが大ニュースになる時代で、メーカーにとってテレビは利益率の高いドル箱商品でした。

また、薄型テレビの開発は、かつてはブラウン管テレビを世に送り出した日本の技術者たちの威信を賭けた勝負でもありました。しかしながら、海外の電機メーカーの台頭により、薄型テレビの価格は大暴落。

高品質と高い信頼性が売りの「メイド・イン・ジャパン」も、海外製品の品質が一定のレベルになり全体的に単価が下がってくると瞬く間に競争力を失ってしまったのです。

日本製の薄型テレビが勝てなくなった事実は、数字がそれを如実に物語っていましたが、経営陣は「いいモノを作っていれば売れる」と強気の姿勢を崩しませんでした。

日本製品が陥りやすい罠でもある「素人には理解できない高機能」など世界市場は振り向いてくれるはずもなく、その傷口は会社の経営基盤を揺るがしかねない事態にまで広がっていきました。

現在、日本の代表的な電機メーカーはテレビの自社生産から撤退し、栄華を誇ったある会社は業績回復までに長い歳月を要し、ある会社は海外の新興企業に再建を託す結果となりました。

これは日本の電機メーカーが「これだけつぎ込んだのにもったいない」サンクコストに拘った結果、「勇気ある撤退」の判断が遅れ、中には取り返しのつかない結果を招いてしまった苦い経験です。

規模こそ異なりますが、フリーランスも同様です。再起のための撤退ならば少しも恥ずかしいことではありません。「勇気ある撤退」ができなかったばかりに取り返しのつかない事態を招くことの方がよほど不幸なのです。

最後に確認して欲しいポイント

フリーランスは、すべてが自分次第の世界ですから会社員時代と違って軌道に乗ってやればやるほど報われることに喜びを感じる人が多く、シビアな世界であることは重々承知の上でも約6割は独立したことに満足していると言われています。

しかし、自身の腕でやっていくフリーランスはちょっとしたことがきっかけとなって廃業するリスクと隣り合わせであることは片時も忘れてはなりません。

廃業した日から1か月以内に税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」、「青色申告の取りやめ届出書」、「事業廃止届出書」も提出するというたったこれだけの手続きが、不幸の連鎖を断ち切り、捲土重来へ向けての新たなスタートとなることもあるのです。

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