年収500万円の個人事業主の税金は、計上する経費や申告方法(青色or白色)によって異なります。
国民健康保険や国民年金、生命保険料や個人年金などで納める税金を抑えることも可能です。
ここでは、年収500万円をはじめとする個人事業主の年収別シミュレーションと節税方法についてご紹介します。
この記事が役に立つ方
・個人事業主の税金を心配している方
・個人事業主の手取り額を知りたい方
・年収別の個人事業主の税金に興味のある方
年収500万の個人事業主が支払う必要がある税金・社会保険料
年収500万円の個人事業主が支払う必要がある税金と社会保険料は次のとおりです。
・所得税
・住民税
・国民年金保険料
・国民健康保険料
・介護保険料(40歳以上の場合)
このほか、年間所得290万円以上の方は個人事業税を納めることになります。
※エンジニアやプログラマー、ライターや作家、ミュージシャンやスポーツ選手は法定業種に含まれないため、個人事業税の対象外です
上記の税金や保険料を収入から差し引いた金額が実際の手取り額となります。
所得税
所得税は年間の所得に対して課せられる税金(国税)です。
所得は「収入-経費-控除額」で算出されます。
たとえば年収500万円の方でも経費と控除額の合計が100万円であれば、500万円-100万円=400万円が年間所得です。
課税所得金額 |
税率 |
課税控除額 |
1,000円から1,949,000円 |
5% |
0円 |
1,950,000円から3,299,000円 |
10% |
97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円 |
20% |
427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円 |
23% |
636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円 |
33% |
1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円 |
40% |
2,796,000円 |
40,000,000円以上 |
45% |
4,796,000円 |
参考資料
国税庁「所得税の税率」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
年間所得400万円の所得税額は372,500円となります。
4,000,000円×20%-427,500円=372,500円
住民税
住民税は年間所得を基にして算出されます。
お住まいの自治体(都道府県と市区町村)に対して納める税金です。
住民税は「前年度の所得×10%(所得割)+5,000円(均等割)」にて算出された金額を、年に4回に分けて納めます。
納付時期は6月と8月、10月と翌年1月です。
面倒な場合には6月に住民税の全額を一括納付することもできます。
国民年金保険料
国民年金は20歳以上60歳未満の方が加入義務を持つ保険制度です。
もちろん個人事業主も例外ではありません。
国民年金保険料はその年ごとに異なります。
参考までに2022年度は16,590円、2023年度は16,520円です。
月々納付するのが基本ですが、6ヶ月や1年、2年分をまとめて支払う前納制度も設けられています。
国民健康保険料
個人事業主の大半が加入するのが国民健康保険です。
家族の扶養に入る方や、勤めていた会社の社会保険の任意継続を選択した方は除きます。
国民健康保険料はお住まいの自治体(市区町村)ごとに算出方法が異なるため、詳しくは市区町村の公式サイトを確認してください。
基本は前年度の所得と加入者数、そして年齢で算出されます。
納付時期は6月から翌年3月までの毎月です。
国民健康保険料も6月に年間保険料の一括払いが認められています。
介護保険料(40歳以上の場合)
介護保険料は40歳以上の方が対象となる保険です。
介護保険料を納めていた方が介護認定された際に、然るべき介護サービスを受けられることを目的としています。
基本的には国民健康保険と同様、前年度の所得に応じた金額が算定される形です。
介護保険料の詳細については、お住まいの自治体(市区町村)のホームページを参照することをおすすめします。
納付時期は国民健康保険料と同様の6月から翌年3月までの毎月です。
個人事業主の年収階層での税金の金額一覧
ここからは、個人事業主の年収ごとの税金の金額を一覧にしてご紹介します。
条件は次のとおりです。
・白色申告と青色申告
・経費と控除額の合計100万円
・40歳~65歳未満、配偶者なし、扶養家族なし
各種計算は以下のリンク先のサイトを利用しています。
https://www.mmea.biz/simulation/solo_calculation/
年収300万円の税金の目安
|
白色申告 |
青色申告 |
所得税 |
53,100円 |
24,500円 |
住民税 |
116,300円 |
59,000円 |
国民年金 |
199,080円 |
199,080円 |
国民健康保険 |
257,300円 |
180,400円 |
個人事業税 |
0円 |
0円 |
手取り金額 |
1,374,220円 |
1,537,020円 |
白色申告と青色申告(65万円)で、所得税と住民税、国民健康保険料に違いが生じることがわかります。
年収400万円の税金の目安
|
白色申告 |
青色申告 |
所得税 |
97,200円 |
68,600円 |
住民税 |
204,500円 |
147,200円 |
国民年金 |
199,080円 |
199,080円 |
国民健康保険 |
375,500円 |
298,600円 |
個人事業税 |
5,000円 |
5,000円 |
手取り金額 |
2,173,720円 |
2,286,520円 |
年間所得が290万円を超えたため、個人事業税が加わります。
※課税対象の業種のみ
年収500万円の税金の目安
|
白色申告 |
青色申告 |
所得税 |
185,200円 |
127,900円 |
住民税 |
292,700円 |
235,400円 |
国民年金 |
199,080円 |
199,080円 |
国民健康保険 |
493,700円 |
416,800円 |
個人事業税 |
55,000円 |
55,000円 |
手取り金額 |
2,173,720円 |
3,020,820円 |
※個人事業税は課税対象の業種のみ
年収が増えるごとに、白色申告と青色申告(65万円)との差が手取り金額に現れています。
年収600万円の税金の目安
|
白色申告 |
青色申告 |
所得税 |
314,300円 |
216,000円 |
住民税 |
380,900円 |
323,500円 |
国民年金 |
199,080円 |
199,080円 |
国民健康保険 |
611,900円 |
535,000円 |
個人事業税 |
105,000円 |
105,000円 |
手取り金額 |
3,493,820円 |
3,726,420円 |
※個人事業税は課税対象の業種のみ
年収700万円の税金の目安
|
白色申告 |
青色申告 |
所得税 |
490,500円 |
375,900円 |
住民税 |
469,000円 |
411,700円 |
国民年金 |
199,080円 |
199,080円 |
国民健康保険 |
730,100円 |
653,200円 |
個人事業税 |
155,000円 |
155,000円 |
手取り金額 |
4,111,320円 |
4,360,120円 |
※個人事業税は課税対象の業種のみ
年収800万円の税金の目安
|
白色申告 |
青色申告 |
所得税 |
667,500円 |
552,300円 |
住民税 |
557,500円 |
499,900円 |
国民年金 |
199,080円 |
199,080円 |
国民健康保険 |
845,400円 |
771,400円 |
個人事業税 |
205,000円 |
205,000円 |
手取り金額 |
4,730,520円 |
4,977,320円 |
個人事業主は会社員よりも税金が高い?
個人事業主は会社員よりも高額の税金を納めているのでしょうか?
個人事業主は経費や控除額の計上によっても大きく異なるため、必ずしもそうとは言い切れません。
むしろ少なく収まる可能性を秘めているという見方もできるほどです。
個人事業主と会社員との税金や保険料の違いとして、以下の3つがあげられます。
・給与所得控除
・消費税や個人事業税
・社会保険料の折半
給与所得控除
個人事業主は経費の計上が可能です。
理論上では経費が多くなればなるほど、所得を少なめに抑えることができます。
(限度はありますが)
一方、企業や団体に勤務する方には経費の計上が困難です。
その代わりとして設けられているのが、給与所得控除と言えるかもしれません。
給与などの支払金額 |
給与所得控除額 |
~1,625,000円 |
550,000円 |
1,625,001円~1,800,000円 |
収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円~3,600,000円 |
収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円~6,600,000円 |
収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円~8,500,000円 |
収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円~ |
1,950,000円 |
※2020年分以降の給与所得控除額です
参考資料
国税庁「No.1410 給与所得控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm
消費税や個人事業税
課税事業者に限り、個人事業主は消費税や個人事業税を納めることになります。
個人事業税は、年間所得290万円超の法定業種に含まれる事業者が対象です。
消費税は前々年度の売上(課税売上高)が、1,000万円を超えた事業者に課せられます。
または前年度の1月から6月の売上(課税売上高)が、1,000万円を超えた事業者も消費税の課税対象です。
社会保険料の折半
会社員として働く方は、企業と社会保険料を折半できるようになっています。
配偶者分の社会保険料に関しては無料です。
一方、個人事業主は国民健康保険料や国民年金保険料を全額支払う必要があります。
配偶者の分も全額納めることになるため、社会保険料の点においては個人事業主の負担が大きくなるのは否めません。
個人事業主ができる節税
個人事業主が合法的にできる節税方法として、次の4つがあげられます。
・青色申告の承認を受ける
・経費をできるだけ多く計上する
・個人年金に加入
・収入によっては法人化を検討する
青色申告の承認を受ける
青色申告の承認を受けることで、最大65万円の所得控除が得られます。
所轄の税務署に青色申告承認申請書を申告する年の3月15日までに提出することで、青色申告での確定申告が可能です。
|
控除額 |
記帳方式 |
主な提出書類 |
申告方式 |
白色申告 |
基礎控除額のみ |
単式簿記 |
収支内訳書 |
書類提出 |
青色申告 |
基礎控除額+10万円 |
単式簿記 |
青色申告決算書 |
書類提出 |
青色申告 |
基礎控除額+55万円 |
複式簿記 |
青色申告決算書 |
書類提出 |
青色申告 |
基礎控除額+65万円 |
複式簿記 |
青色申告決算書 |
e-tax |
合計所得金額 |
基礎控除額 |
~24,000,000円 |
480,000円 |
24,000,001円~24,500,000円 |
320,000円 |
24,500,001円~25,000,000円 |
160,000円 |
25,000,001円~ |
0円 |
経費をできるだけ多く計上する
所得は収入-経費-控除額で算出されます。
つまり、経費をできるだけ多く計上することで所得を抑えることも可能です。
業種にもよりますが、インターネット接続のプロバイダ料金や携帯電話料金も、家事按分として経費計上することが認められています。
自宅兼仕事場の場合には、電気やガスや水道料金、固定資産税や月額賃料の家事按分での経費の計上が可能です。
個人年金に加入
個人年金への加入も、個人事業主ができる節税方法のひとつです。
たとえば個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」の場合、納めた掛け金の全額が所得控除として適用されます。
個人年金は生命保険会社や金融機関が提供しているため、興味のある方はそれぞれの公式サイトを確認してみましょう。
収入によっては法人化を検討する
収入によっては法人化を検討するのも節税対策となり得ます。
たとえば年収で1,000万円を超えるようであれば、株式会社や合同会社への切り替えのタイミングと言えるかもしれません。
個人事業主が法人化することで、税制面の優遇はもちろんのこと、助成金や補助金の申請もできるようになります。
<フリーランスの税金や節税については、あわせてこちらの記事も参考にしてください>
「フリーランスが知っておくべき税金とは?基礎知識や節税対策を解説」
まとめ
ここまで、個人事業主の税金に関する以下の項目を紹介してきました。
・年収500万の個人事業主が支払う必要がある税金・社会保険料
・個人事業主の年収階層での税金の金額一覧
・個人事業主は会社員よりも税金が高い?
・個人事業主ができる節税
個人事業主が納める税金は、経費や控除額の計上によって節税することが可能です。
できれば開業時に開業届と青色申告承認申請を、所轄の税務署に提出しておくことをおすすめします。